「小円を大円の内部におく.大円上の点P0から小円へ接線を引き,大円と交わる点をP1とする.P1から再び小円へ接線を引き,大円と交わる点をP2とする.この2つの円の中間に次々に接する接線列を作る.たいていの場合,最後の交点は最初の点P0と重ならない.しかしときとして完全に重なる場合がある.このとき,最初の点P0をどこに選ぼうとも完全な多角形環をなす.」というのがポンスレーの定理である.また,ポンスレーの定理は2つの円を2つの楕円に置き換えても成立する.
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【1】ポンスレーの定理と楕円積分
ポンスレーの定理では楕円積分に帰着させる微分積分学的な証明が知られている.
∫(φ,φ+π)dθ/(1−k^2sin^2θ)^1/2=nω
披積分関数は周期πの周期関数であるからφの値に依存しない.したがって,最初の点P0をどこに選ぼうとも完全な多角形環をなすというわけである.
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【2】円積分の倍角公式
この証明から周長のn等分問題が想起されますが,円周の場合,
2∫(0,x)f(t)dt=∫(0,2x(1-x^2)^1/2)f(t)dt
2G(x)=G(2x(1−x^2)^1/2)
が成り立ちます.
2x(1-x^2)^1/2はxから四則演算および平方根により得られますので,この式は定規とコンパスだけで円弧長を2倍にする作図が可能であることを示しています.
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【3】円積分の半角公式
1/2∫(0,x)f(t)dt=∫(0,{(1-(1-x^2)^1/2)/2}^1/2)f(t)dt
が成り立ちます.
2x(1-x^2)^1/2,{(1-(1-x^2)^1/2)/2}^1/2はxから四則演算および平方根により得られますので,この式は定規とコンパスだけで円弧長を1/2倍にする作図が可能であることを示しています.とくに,sinu=1(cosu=0)のとき,sinu/2=1/√2ですから,4半円弧長を定規とコンパスで2等分できることがわかります.
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【4】レムニスケート積分の倍角公式
2∫(0,x)f(t)dt=∫(0,2x(1-x^4)^1/2/(1+x^4))f(t)dt
2G(x)=G(2x(1−x^4)^1/2/(1+x^4))
が成り立ちます.
2x(1-x^4)^1/2/(1+x^4)もxから四則演算および平方根により得られますので,円同様,レムニスケートも定規とコンパスだけで弧長を2倍にする作図が可能であることを示しています.
1751年,オイラーは逆正弦関数の加法定理
G(x)+G(y)=G(x(1−y^2)^1/2+y(1−x^2)^1/2)
との類似に基づいて,レムニスケート積分に対する加法定理
G(x)+G(y)=G((x(1−y^4)^1/2+y(1−x^4)^1/2))/(1+x^2y^2))
を構成することに成功しています.
レムニスケートには円に共通する性質があり,定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数(n=22^m+1の形の素数:3,5,17,257,65537)であることです.
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【5】レムニスケート積分の半角公式
倍角公式を取り上げたので,ここでは半角公式,すなわち「レムニスケートの弧長を1/2倍にすること」について調べてみることにします.
sl(u/2)=(-1+√2)^1/2も四則演算および平方根により得られますので,円同様,レムニスケートの4半弧も定規とコンパスだけで弧長を1/2倍にする作図が可能であることを示しています.
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【6】1/(1-t^3)^(1/2)
∫1/(1-x^2)^(1/2)dx
は円(2次曲線),
∫1/(1-x^4)^(1/2)dx
はレムニスケート(4次曲線)に対応していますが,周長が
∫1/(1-x^3)^(1/2)dx
∫1/(1-r^3)^(1/2)dx
で表される曲線はどのようなものになるでしょうか?
この円と双葉の中間に位置する幾何学的対象物は,微分方程式
(1+(dy/dx)^2)^(1/2)=1/(1-x^3)^(1/2)
dy/dx=(x^3/(1-x^3))^(1/2)
あるいは
{1+(rdθ/dr)^2}^(1/2)=1/(1-r^3)^(1/2)
dθ/dr=(r/(1-r^3))^(1/2)
を満たさなければなりませんが,このことから12次曲線
r^(3/2)=cos(3/2θ)
が得られます.
この半三つ葉型の「中間曲線」は2等分できないことがわかります.レムニスケートは定規とコンパスだけで2^n等分(さらに奇数のn等分,n=3,5,17,257,65537)できるいかに特殊な曲線であるのか,おわかりいただけるでしょう.
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