昆虫には太陽光線に対して一定の角度を維持しながら飛ぶという習性があり,(太陽光線は平行光線とみなせるので日中は問題ないが)夏の夜,街灯や集蛾灯の回りをぐるぐる飛び回る虫の飛跡は対数らせんとなります.
対数らせんとは
r=a^θ (あるいはr=aexpkθ)
により表される曲線で,動径をいつも一定の角度で横切るという特徴があり,等角らせんとも呼ばれています.
金原博昭さんの黄金らせんと白銀らせん,それらの平面における相補性の話は「整数の平方根の連分数」と関係していますので,今回のコラムでは.連分数の話しを取り上げてみます.
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【1】最も素朴な循環連分数
最も素朴な循環連分数は
√m=[q0;2q0,2q0,2q0,・・・]
で表されるものと考えられます.
このとき,
P=2q0^2+1,Q=2q0
より,mは
(2q0^2+1)^2−m・4q0^2=±1
を満たす整数となるのですが,結局,このようなmは
m=q0^2+1=2,5,10,・・・
となることが導き出されます.
√2=[1;2,2,2,・・・]
√5=[2;4,4,4,・・・]
√10=[3;6,6,6,・・・]
√101=[10;20,20,20,・・・]
しかし,他の整数の平方根はかなり長い周期を持つが,長周期を予言する公式はないようである.
√61=[7;1,4,3,1,2,2,1,3,4,1,14,・・・,・・・]
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【2】黄金比と白銀比
[Q]辺の比が1:xの長方形がある.この長方形を2等分してできた小さい長方形がもとの長方形と相似になるのは?
[A]1:x=2/x:1 → x=√2
[Q]長方形から正方形を切り取った後に残る長方形がもとの長方形と相似になるのは?
[A]1:x=x−1:1 → x=(1+√5)/2
√2とφ=(1+√5)/2は1辺と対角線の長さの比である特別な値であって,それぞれ白銀比,黄金比と呼ばれている.縦横比が白銀比,黄金比の長方形を考える.白銀長方形を長辺を2等分するように2つ折りにすると,一回り小さな白銀長方形が現れる.このことから白銀長方形は紙のサイズの規格になっている.一方,黄金長方形から正方形を取り除くと一回り小さな黄金長方形が現れてくる.黄金長方形も自己再現型図形としてよく知られている.
この操作は無限に続けることができるが,このことは黄金比,白銀比がそれぞれ,無限級数
1+1/φ+1/φ^2+1/φ^3+1/φ^4+・・・=φ^2
1+1/2+1/2^2+1/2^3+1/2^4+・・・=2
無限連分数
φ=[1:1,1,1,1,・・・]
√2=[1:2,2,2,2,・・・]
で表されることと同義である.
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【3】もうひとつの白銀比
[Q]長方形から正方形を2つ切り取った後に残る長方形がもとの長方形と相似になるのは?
[A]1:x=x−2:1 → x=1+√2
[Q]長方形から正方形をn個切り取った後に残る長方形がもとの長方形と相似になるのは?
[A]1:x=x−n:1 → x=(n+√(n^2+4))/2
これは黄金比のもうひとつの一般化であるが,この操作は無限連分数
(n+√(n^2+4))/2=[n:n,n,n,,n,・・・]
で表されることと同義である.
φ=[1:1,1,1,,1,・・・]
1+√2=[2:2,2,2,2,・・・]
(3+√13)/2=[3:3,3,3,3,・・・]
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「白銀比」は黄金比のある種の一般化である,周期長さ1をもつ周期的連分数として表すことのできる数として定義される.
τ+/-N=N±1/τ+/-N → x^2−Nx±1=0
より
τ+1=1+1/τ+1→t+1=φ
τ+2=2+1/τ+2→t+2=1+√2
τ-4=−4+1/τ-4→t-4=2+√3
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【4】おまけ
[Q]大長方形から正方形をa個切り取った後に残る中長方形から,正方形をb個切り取った後に残る小長方形が中長方形と相似になるのは?
[A]単純循環連分数
L=[a:b,b,b,b,・・・]
で表される数Lを求めてみることにしましょう.
L−a=R=[0:b,b,b,b,・・・]=1/(b+R)
R^2+bR−1=0 → R=(−b+(b^2+4)^(1/2))/2
L=a+R=a−b/2+(b^2/4+1)^(1/2)
a=1,b=1 → L=(1+√5)/2=[1;1,1,1,1,1,・・・]
a=1,b=2 → L=√2=[1;2,2,2,2,2,・・・]
a=2,b=4 → L=√5=[2;4,4,4,・・・]
[Q]大長方形から正方形をa個切り取った後に残る中長方形から,正方形をb個切り取り,さらに正方形をc個切り取った後に残る小長方形が中長方形と相似になるのは?
[A]同様に,2項が循環する連分数は
L=[a:b,c,b,c,・・・]
L−a=R=[0:b,c,b,c,・・・]=1/(b+1/(c+R))
bR^2+bcR−c=0 → R=(−c+(c^2+4c/b)^(1/2))/2
L=a−c/2+(c^2/4+c/b)^(1/2)
a=1,b=1,c=2 → L=√3=[1;1,2,1,2,1,2,・・・]
a=2,b=2,c=4 → L=√6=[2;2,4,2,4,2,・・・]
実数xの整数部分,小数部分を
x=[x]+{x}
で表します.同様に,連分数表示を整数部分と小数部分に分けます.
[a:b,b,b,b,・・・]=a+[0:b,b,b,b,・・・]=a+<b,b,b,b,・・・>
[a:b,c,b,c,・・・]=a+[0:b,c,b,c,・・・]=a+<b,c,b,c,・・・>
たとえば,小数部分<b,b,b,・・・>となる数をxとおくと,
x=1/(b+x) → x=(√(n^2+4)−n)/2
このように循環連分数は整数係数の2次方程式の解となります(ラグランジュの定理).
(√5−1)/2=[0:1,1,1,,1,・・・]
√2−1=[0:2,2,2,2,・・・]
(√13−3)/2=[0:3,3,3,3,・・・]
<1,1,1,・・・>=xはx=1/(1+x)の正の解(√5−1)/2に収束します.この近似分数は,フィボナッチ数列
a0=0,a1=1,an+2=an+an+1
1,2,3,5,8,13,・・・
の相隣る2項の比となります.
また,<2,2,2,・・・>=xはx=1/(2+x)の正の解√2−1に収束します.この近似分数は,数列
a0=1,a1=1,an+2=an+2an+1
1,2,6,12,29,70,・・・
の相隣る2項の比となります.この数列は√2−1の最良近似数列です.
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