【1】多角形の等周問題
どのような多角形でも辺の長さを変えずに,内角を変えて円に内接させることができます.また,どのような多角形でも辺の長さを変えずに,内角を変えて囲む面積を最大にすることができます.
n≧4のとき,各辺の長さが指定されたn角形の中で,面積が最大のものは円に内接します.さらに周の長さが指定されたn角形の中で,面積が最大のものは正n角形です(円を球帽に変えれば球面n角形に対しても成り立つ).
単位円に内接する凸n角形の周長Lは
L=2(sinα1+・・・+sinαn)
これより,
L≦2nsin(π/n)
また,外接する場合,
L=2(tanα1+・・・+tanαn)
L≧2ntan(π/n)
一般に,凸n角形の面積S,周長L,内接円の半径r,外接円の半径Rの間には,次の不等式が成り立ちます.
2nrtan(π/n)≦L≦2nRsin(π/n)
nr^2tan(π/n)≦S≦1/2nR^2sin(2π/n)
等号は正n角形の場合にのみ成り立ちますから,定円に外接するn角形の中で,正n角形は周長・面積が最小であり,内接するn角形の中で,正n角形は周長・面積が最大となります.このことは直観的にも理解されるでしょう.
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【2】シュタイナーの定理の有限フーリエ級数を用いた証明
同じ周長Lをもつ平面上のすべてのn角形のうち,最大の面積をもつものは正n角形である.
(証)多角形Π=(z0,z1,・・・,zn-1)を等辺n角形とし,
za=Σ(j=0-n-1)ζjωa^j=ζ0+ζ1ωa+ζ2ωa^2+・・・+ζn-1ωa^n-1
ωa=exp(2πia/n) (a=0,1,・・・,n−1)
をその頂点の有限フーリエ級数とする.
直交性の関係より
Σ(j=0-n-1)zjωa~^j=ζa・n
ζa=1/n・(z0+z1ωa~+z2ωa~^2+・・・+zn-1ωa~^n-1)
このとき,
L^2=Σ(j=0-n-1)|zj−zj+1|^2=nΣ(j=0-n-1)|ωj−1|^2|ζj|^2=Σ(j=0-n-1)4n^2(sinπj/n)^2|ζj|^2
A=Σ(j=0-n-1)|xjyj+1−xj+1yj|/2=Σ(j=0-n-1)Im(zj~zj+1)=n/2Σ(a=0-n-1)|ζa|^2Isin(2πa/n)
より
L^2−(4ntanπ/n)A=Σ(j=2-n-1)4n^2sinπj/n(sinπj/n−tanπ/ncosπj/n)|ζj|^2
が成り立つ.正k角形であれば,その面積Aは
A=L^2/(4ntanπ/n)
で与えられる.
不等式
A≦L^2/(4ntanπ/n) (等号は正n角形に対してのみ成り立つ)
において,n→∞とすると
A≦L^2/(4π) (等号は円に対してのみ成り立つ)
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【3】注意
[1]L^2−(4ntanπ/n)A=Σ(j=2-n-1)4n^2sinπj/n(sinπj/n−tanπ/ncosπj/n)|ζj|^2の右辺には,j=0とj=1に対する項はない.
[2]j=2,3,・・・,n−1に対して,|ζj|^2の係数の符号は正である.
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