コラム「n次元正多面体の辺と対角線」で考えたことは,球面上のn点集合についての幾何学に昇華することがわかったが,ランダムに配置された図形の幾何学は「積分幾何学」と呼ばれている.
測度の計算には積分がでてくるからであるが,種々の図形について変位で不変な測度を求め,確率測度に基づいてつくられた幾何学要素の確率論という意味で「確率幾何学」とも呼ばれている.今回のコラムでは,まず,ベルトランのパラドックスを示そう.
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【1】ベルトランのパラドックス
(Q)中心O,半径rの円の内部に任意の点Pをとるとき,
OP<r/2
である確率はいくらか?
(A1)中心O,半径r/2の円の内部であるから1/4
(A2)点Pは半径上の点であるから1/2
(A3)点Pは半径を直径とする半円周上の点であるから1/3
このように色々の解が考えられるが,こられ3つの解はどれも一応もっともである.ひとつの問題に対して幾通りもの違った解が導かれるのは驚きであって,ベルトランのパラドックスと呼ばれている.なぜ違った答えがでてきたのか,それは点分布のランダムネスの考え方の違いに基づいていることは明らかであろう.
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【2】ビュフォンの針の問題(1777年)
(Q)平面上に等間隔で平行線が引かれているとき,この平面上に落とした針が平行線のどれかに交わる確率は?
(A)針の長さをL,平行線の間隔をdとすると
2L/πd
ステレオロジーでは3次元空間内の平面と凸体との交差についての研究が行われている.
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【3】クロフトンの公式(1868年)
(Q)凸閉曲線c1の内部に凸閉曲線c2があるとき,c1に交わる任意の直線がc2にも交わる確率は?
(A)直線の集まりの測度が決まれば,
c2に交わる直線全体の測度/c1に交わる直線全体の測度
として計算される.
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【4】まとめ
微分幾何学に較べれば積分幾何学の分野は狭いものであって,むしろ広い意味での微分幾何学の一分科,一部門とみなしてもよいものである.
[参]粟田稔「積分幾何学」共立出版
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