正5角形の作図問題については,円分多項式から条件を満たす代数方程式が直接計算できるが,着眼点を変えてみよう.
すると,対角線の長さの積と2乗の和に関する2つの定理
[定理1]単位円に内接する正n角形のひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積はnに等しい.
が成り立つ.
[定理2]単位円に内接する正n角形のひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの平方和は2nに等しい.
から,初等的に求めるという工夫が可能になる.
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【1】円分多項式
z^5−1=(z−1)(z^4+z^3+z^2+z+1)=0
z^4+z^3+z^2+z+1=0,z≠0より,両辺をz^2で割ると
z^2+1/z^2+(z+1/z)+1=0
(z+1/z)^2+(z+1/z)−1=0
X=z+1/zとおくと,
X^2+X−1=0,X=(−1±√5)/2
X^2=(3±√5)/2,x^2−4=(−5±√5)/2
z^2−Xz+1=0,z=(X±√(X^2−4)/2
より,
z=(−1+√5)/4+i{(5+√5)/2}^1/2/2
z=(−1−√5)/4+i{(5−√5)/2}^1/2/2
の2虚根が得られる.前者はtan(2π/5),後者はtan(4π/5)に対応している.
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【2】対角線の長さの積と2乗の和に関する定理
辺の長さをx,対角線の長さをyとすると(x<y),
[定理1]→x^2y^2=5
[定理2]→2x^2+2y^2=10,x^2+y^2=5
x^2、y^2は2次方程式
X^2−5X+5=0
の2実根であるから,
x^2=(5−√5)/2,y^2=(5+√5)/2
すなわち,(複)2次方程式の範囲内で(x,y)が求まる.
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【3】円に内接する正5角形の作図
円分多項式は正5角形の中心角2π/5を求めるもの,対角線の長さの積と2乗の和に関する定理を用いるものは正5角形の1辺の長さを求めるものである.
円Oに内接する正5角形の作図の手順は
[1]直径ABを引く
[2]ABを垂直二等分線を引き,円Oとの交点をCとする
[3]ABを垂直二等分線を引き,AOとの交点をDとする
[4]Dを中心とする半径DCの円弧を描き,ABとの交点をEとする
[5]Cを中心とする半径CEの円弧を描き,円Oとの交点をFとする
[6]CFが正5角形の1辺の長さとなる
であるが,
DC=√5/2
CE={(5−√5)/2}^1/2=x(1辺の長さ)
になっているというわけである.
職場のU嬢とM師がこの作図にチャレンジしたが,誤差が累積し正5角形の始点と終点がなかなか一致しない.作図方法に誤りがあるのではないかと不服そうだったが,簡単な計算によって作図方法は正しいことが確認された.
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