■ディリクレ積分とフレネル積分

 クロソイド曲線は

  x(s)=∫(0,s)cos(θ^2/2)dθ

  y(s)=∫(0,s)sin(θ^2/2)dθ

で与えられるが,これはフレネル積分の特別な場合である.

 その曲率半径は1/s(曲率はs)である.sは弧長であるから,曲線に沿って原点から遠ざかるにつれて,一定値sで曲率は大きくなることがわかる.

  [参]垣田高夫ら「現象から微積分を学ぼう」日本評論社

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【1】ディリクレ積分

  ∫(0,t)sint/tdt

の披積分関数をべき級数に展開したのち,項別に積分すると,

  x−x^3/3・3!+x^5/5・5!−・・・

が得られる.正弦積分とは,

  Si(x)=∫(0,t)sint/tdt

として定義される特殊関数(初等関数によって表し得ない関数)である.

 また,その特殊値

  Si(∞)=∫(0,∞)sint/tdt=π/2

はディリクレ積分とも呼ばれる.

  ∫(0,∞)sinx/xdx=π/2

はよく知られていて,複素積分などを用いて求めることができる.

 コラム「シンク関数の数学的諸性質」ではシンク関数の積分

  ∫(0,∞)Πsin(x/(2k+1))/(x/(2k+1))dx=π/2   k=0~6

  ∫(0,∞)sin^k(ax)/x^kdx=a^(n-1)π/2-a^(n-1)π/(m-1)!2^(n-1)Σ(-1)^(r-1)(n-1,r-1)(n-2r)^(n-1)

について調べてみた.とくに,

  ∫(0,∞)Πsin(x/(2k+1))/(x/(2k+1))dx=π/2   k=0~6

では,非常におもしろい現象が起こっていることについて述べた.

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)dx=π/2

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)dx=π/2

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/13)dx=π/2

が成り立ち,これらは一般に

  ∫(0,∞)Πsinc(kx)dx=π/2

と書くことができる.Mathematicaを用いて計算してみても,

  ∫(0,∞)Πsinc(kx)dx,

  k=1/(2i+1),i=0~

において,i≦6でπ/2となる.

 ところが,i=7のとき,

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/13)sinc(x/15)dx=R*π

  R=467807924713440738696537864469/935615849440640907310521750000

   =0.499999999992646・・・

となって,π/2とはならないのである.

 さらに検証してみると,i≧7で右辺はπ/2にはならず,i=8では,

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/15)sinc(x/17)dx=R*π

  R=17708695183056190642497315530628422295569865119/354173907883011952948983529875210935040000000

i≧9でも同様に,有理数ではあるが簡単なものにはならなかった.

 次に,係数を変えて

  ∫(0,∞)Πsinc(kx)dx,

  k=1/(3i+1),i=0~

を計算してみた結果,i≦10でπ/2となった.

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【2】フレネル積分

  ∫(0,∞)sin√x/xdx=?

において,y=√xとおくと,dx=2ydyより

  ∫(0,∞)siny/y^2・2ydy=2∫(0,∞)siny/ydy=π

となる.しからば

  ∫(0,∞)sinx/√xdx=?

というのが今回の問題である.

 y=√xとおくと

  ∫(0,∞)sinx/√xdx=∫(0,∞)siny^2/y・2ydy=2∫(0,∞)siny^2dy

はフレネル積分の特殊値となり,x→∞の極限は

  ∫(0,∞)sinx/√xdx=√(π/2)

になる.

 結論を先にいってしまったが,披積分関数をべき級数に展開したのち,項別に積分すると,次の展開式が得られるという.

  (∫(0,∞)sinx/√xdx)^2=Σ(2k)!/2^2k(k!)^2・1/(2k+1)

  =Π4k^2/(4k^2-1)=π/2

 フレネル積分に対して,[1]と同様の拡張を施してみたが,フレネル積分では,おもしろい現象は起こらなかった.→コラム「フレネル積分の諸性質」参照

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【3】広義ディリクレ積分の収束性

[1]α,βが正の定数でα>β−1を満たすとき,広義積分

  ∫(0,1)sinx^α/x^βdx=?

が収束することを示す.

 x→0のとき,sinx/x→1であるから,ある定数C1,C2があって

  C1≦sinx/x≦C2

が成り立つ.ゆえに

  C1x^(α−β)≦sinx^α/x^β≦C2x^(α−β)

  C1∫(h,1)x^(α−β)dx≦∫(h,1)sinx^α/x^βdx≦C2∫(h,1)x^(α−β)dx

 β−α<1より,h→0の極限をとると,hについて単調減少で下に有界であるから,当該の広義積分は存在し,値はC1∫(0,1)x^(α−β)dxとC2∫∫(0,1)x^(α−β)dxの間にある.

 とくに,α=1,0<β<2とすれば,広義積分

  ∫(0,1)sinx/x^βdx=?

は収束する.したがって,β=1/2

  ∫(0,1)sinx/√xdx=?

が存在する.

 y=√xと変数変換すると

  ∫(0,1)sinx/√xdx=∫(0,1)siny^2/y・2ydy=2∫(0,1)siny^2dy

になる.

[2]βが正の定数のとき,広義積分

  ∫(1,∞)sinx^α/x^βdx=?

が収束することも示すことができる.

 [1],[2]を併せると,フレネル積分

  S(∞)=∫(0,∞)sin(πt^2/2)dt

の収束は保証されたことになる.

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