流体力学の学び初めにクノップ流やハーゲン・ポアズイユ流に出会う.血管内の血流は多くの部位でハーゲン・ポアズイユ流になる.
ハーゲン・ポアズイユ流では血流速度は
v(r)=P/4ηl・(R^2−r^2)
が成り立つ.すなわち,血管の中心軸では
v(0)=P/4ηl・R^2
血管壁では
v(R)=0
という血流速度が放物線
r=(R^2−4ηlv/P)^1/2
にしたがって変化するという数理モデルである.(ちなみにクノップ流は流速が直線に従って変化するという数理モデルである.)
さて,単位時間の血流量を求めるために,上記モデルを断面で積分すると
Q=∫(0,R)2πrv(r)dr=πP/8ηl・R^4
Q=(πR^4/8ηl)・P=Ω・P
となり,Ωは抵抗を表すと考えられる.
電気抵抗はR^2に反比例するのに対し,血流抵抗はR^4に反比例し,血管の半径が1/2になれば血流は1/16,抵抗は16倍になることがわかる.血管の収縮によって血流や血圧は大きな影響を受けるのである.
[参]垣田高夫ら「現象から微積分を学ぼう」日本評論社
によれば,血管が枝分かれしているときのハーゲン・ポアズイユ流については,分岐角θが
cosθ=(r2/r1)^4
を満たすとき,抵抗は最小となるそうだ.数学がこのような計算にも役立っていることを知れば,数学が苦手な人もちょっとは好きになれるかもしれないだろう.
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