ニュートンは,逆2乗則にしたがう引力が宇宙のどの場所においても,どんな2つの物体の間にも例外なく存在するはずだという,実に大きな知的飛躍を試みて大成功をおさめました(万有引力の法則).
天体力学において,2つの物体まではニュートン力学によって解析的な計算を行うことができ,互いに引力を及ぼしあっている二つの物体は楕円,放物線,双曲線のうちのいずれかの軌道になることが証明されています.
例えば,地球から打ち上げた人工衛星の初速が秒速7.9km(第1宇宙速度)のとき円,それ以上で秒速11.2km(第2宇宙速度)以下のとき地球を焦点とする楕円,秒速11.2kmのとき放物線,それより速いときは双曲線を描くといった具合です.放物線軌道,双曲線軌道になると地球の重力圏を脱出し,もう地球に戻ってくることはありません.このように,人工衛星の運動ではニュートン力学は実にうまくあい,相対性理論を使う必要はまずありません.
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【1】第1宇宙速度
(Q)円:x^2+(y−r)^2=r^2と放物線:y=ax^2が原点のみで接するためのaの存在範囲は?
(A)xを消去すると
y/a−y^2−2ry=0 → y=0,y=2r−1/a
原点のみで接するためにはy=2r−1/a≦0
よって,0<a≦1/2r
地球の半径をR=6400km,重力加速度をg=10m/s^2とすると
x=vt,y=gt^2/2 → y=gx^2/2v^2,a=g/2v^2
0<a≦1/2Rに代入すると,人工衛星は地球の引力圏から脱出可能な打ち上げ時の初速は
v≧√gR=8km/s
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【2】第2宇宙速度
万有引力定数をG,地球の質量をM,人工衛星の質量をmとすると,地球が人工衛星に及ぼす引力は
F=GMm/R^2=mg → GM/R=gR
また,(その2)より無限遠を基準とする位置エネルギーは
U=−GMm/R
運動エネルギーはK=mv^2/2であるが,K+U<0でないと,人工衛星はいったん打ち上げたが最後,地球に戻ってくることができなくなってしまう.
mv^2/2−GMm/R<0
v<√2gM/R=√2gR=11km/s
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【3】多段式ロケット
第1宇宙速度は1段式ロケットの最終速度を超えていることから,人工衛星の最終速度を高めるためには多段式ロケットを考えなければならない.その場合,構造の複雑化と費用の増加との兼ね合いから2段式ロケットが実用的である.
[参]垣田高夫ら「現象から微積分を学ぼう」日本評論社
によれば,
第1段で得られる最終速度の2倍が人工衛星の最終速度
第1段ロケットの質量≒第2段ロケットの質量の10倍
という結果が得られるという.
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