コラム「階乗や2項係数を含む級数(その2)」において,秋山仁先生が意図した
Σ(n,k)2^(n-k)=Σ(n,k)2^k=3^n
の図形的説明とは,「立方体の接触数」のように幾何学的にどのような意味をもっているかという類の話ではなくて,「グノモン」のようなものである.
数論の学び初めに
奇数の和=平方数 (Σ(2k−1)=n^2)
に出会う.グノモンはこの結果を示すのに用いられる.以前,秋山仁先生に
立方数の和=三角数の平方 (Σk^3=(n(n+1)/2)^2)
の証明用の数学模型を見せていただいたが,列和だけでなく,グノモン型の和をとり,2通りの方法で計算することにより得られる等式であることが明確になる.
この計算は,家計簿つけのシーンに似ている.まず行ごとの合計を求めてそれを総計する.次に列ごとの合計を求めてそれを総計する.そして計算が正しければその2つの計算結果は一致するというわけである.
また,グノモンを応用すると,
gk=(k^2)!/1・2^2・・・k^k・(k+1)^k-1・・・(2k−1)
において,
g1=1,g2=2,g3=42,g4=24024
g5=701149020
g6=1671643033734960
g7=475073684264389879228560
g8=22081374992701950398847674830857600
のようにgkが整数であることの証明もうまくいくのである.→コラム「係数gkの整除性」参照
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しかるに,小生が意図とした図形的説明とは,図形を使った証明ではなくて,幾何学的な意味合いあるいは背景の説明のことであった.なお,+1,−1を成分とする直交行列(アダマール行列とよばれる)にも「n次元超立方体の頂点をうまく結んで正軸体を作ることはできるか」という幾何学的な意味合いを与えることができるのである.
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