■階乗や2項係数を含む級数(その2)

 パスカルの三角形において,水平線上の値を合計すると2のベキが現れる.

  Σ(n,k)=2^n

 二項係数とフィボナッチ数の間にもエレガントな関係があるが,それはパスカルの三角形の対角線上の値を合計するとフィボナッチ数が現れるというものである.

  Fn=Σ(k=0~[n/2])(n−k,k)

 今回のコラムで紹介する級数は,二項係数と2のベキの積和には3のベキが現れるというものである.

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【1】正多胞体におけるオイラー・ポアンカレの定理

 fkをn次元多面体のk次元面の数とし,

  (f0,f1,・・・,fn-2,fn-1)

を構成要素とするn次元正多胞体では,組み合わせ的方法によって,k次元胞数fkが求められます.

 たとえば,正単体では

  fk=(n+1,k+1)

なのですが,k=n−1のときfk=n+1であって,胞数はn+1と計算されます.

 同様に,正軸体では

  fk=2^k+1(n,k+1),k=n−1のとき,fk=2^n

立方体では

  fk=2^n-k(n,k),k=n−1のとき,fk=2n

となります.

 もちろん,

  正単体:fk=(n+1,k+1)

  正軸体:fk=2^k+1(n,k+1)

  立方体:fk=2^n-k(n,k)

はオイラー・ポアンカレの定理:

  f0−f1+f2−・・・+(−1)^(n-1)fn-1=1−(−1)^n

すなわち,nが奇数なら2,偶数なら0を満たします.この定理は正多胞体に限らず,n次元凸多胞体について常に成立します.

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【2】正多胞体におけるオイラー・ポアンカレの定理の双対?

 オイラー・ポアンカレの定理は交代和

  Σ(−1)^k(n+1,k+1)

  Σ(−1)^k(n,k)2^(n-k)

  Σ(−1)^k(n,k+1)2^(k+1)

であったが,ここでは正項の和

  Σ(n+1,k+1)

  Σ(n,k)2^(n-k)

  Σ(n,k+1)2^(k+1)

を考える.

  Σ(n+1,k+1)=2(2^n−1)

はいいとしても,

  Σ(n,k)2^(n-k)=Σ(n,k+1)2^(k+1)

を閉じた形に表すことはできないのだろうか?

 結論を先にいうと,

  Σ(n,k)2^(n-k)=3^n−1

である.k=nまで加えると−1は要らなくなる.

  Σ(n,k)2^(n-k)=3^n

 証明は,パスカルの三角形

  Σ(n,k)p^kq^(n-k)=(p+q)^n

において,p=1,q=2とおくことにより簡単に導かれる.

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【3】図形的説明

 立方体の話にはいる前に,まず,正方形のブロック積みを考えてみましょう.3つの正方形が1点で出会うように平面を敷き詰めると,すべての正方形はは周りの6つの正方形に接することがわかります.お城の石垣でもタマネギの細胞でもこのような原則が成り立っています.

 次に,立方体の場合を調べてみます.1段目を敷き詰めたあと,2段目も1段目と同じように敷き詰めるが,1段目の立方体のすべての頂点を2段目の立方体で覆うようにずらして積み重ねると,1段目の立方体の上には4つの立方体が載ることになる.3段目も同様に行うと同じ段に6,上の段に4,下の段にも4で合計14の立方体に接することになります.(球の接触数12よりも多い).

 3次元では14の立方体に接触できることはわかりましたが,それでは4次元,5次元,・・・,n次元ではどうなるのでしょうか? これを知る人はたとえいたとしても非常に少ないであろうと思います.そこで証明抜きで次元論の敷石定理について解説すると,最大2(2^n−1)個接触することができます.すなわち,2次元では6個,3次元では14個,4次元では30個(超球の接触数24よりも多い),5次元では62個,6次元では126個となるのです.

 一方,立方体の単純立方格子状配置,すなわち角砂糖の箱の封を切ったときに見えるパターンについては説明するまでもありませんが,面接触数を数えると6,一般にn次元立方体では2nになります.それでは点接触数,辺接触数も加えたらどうなるでしょうか? 正方形を囲型に配置する場合は8,立方体では26,n次元立方体では3^n−1になります.(中央の立方体を加えると3^n)

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【4】雑感

  Σ(n,k)2^(n-k)=3^n−1あるいは3^n

を公式集

  一松信「数学公式U」岩波

  新数学公式集T(初等関数),丸善

  "Table of Integrals,Series and Products"

  I.S.Gradshteyn and I.M.Ryzhik,6th Edition,Academic Press

をめくって探索してみたが,みつからない.

 そのため,コラム「n次元の立方体と直角三角錐(その60)」では超幾何関数まで持ち出して証明するはめになったのだが,パスカルの三角形

  Σ(n,k)p^kq^(n-k)=(p+q)^n

においてp=1,q=2とおくことにより簡単に導かれる.また,このことから,二項係数と3のベキの積和には4のベキが現れることもわかるだろう.

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