ここでは,nCkのことを(n,k)を書くことにする.階乗や2項係数などを含んだ有限和では,たとえば
Σ(n,k)=2^n
次数nの2項係数の和は2^nであるという有名な(古い?,由緒ある?)恒等式がある.これは,パスカルの三角形
Σ(n,k)p^kq^(n-k)=(p+q)^n
において,p=1,q=1とおくことにより簡単に導かれる.
2項係数の2乗の和も非常に簡単である.
Σ(n,k)^2=(2n,n)
(証明)文字1,2,・・・,nからk個の文字の選び方は(n,k)通り.
文字n+1,n+2,・・・,2nからn−k個の文字の選び方は(n,n-k)通り.
したがって,そのような対の選び方は(n,k)(n,n-k)=(n,k)^2通り.
一方,2n個の文字1,2,・・・,2nからn個の文字の選び方は(2n,n)通り.各kに対する上の対の選び方は1対1に対応しているから,その和Σ(n,k)^2は(2n,n)に等しい.
2項係数に関して
ΣnCknCn-k=Σ(nCk)^2=2nCn
が成り立つので,計算が非常に簡単になったが,では3乗の和,4乗の和はどうなるのであろうか?
Σ(n,k)^3=?,Σ(n,k)^4=?
実は,これには単純な公式のないことが証明されている.
比較的有名な有限級数をあげておくと,
Σ(-1)^k(n,k)=0
Σk(n,k)=n2^(n-1)
Σ(2n-2k,n-k)(2k,k)=4^n
また,有名ではないが,次のようにゼータ関数に帰着する無限級数も知られている.
Σ1/(2n,n)={2π√3+9}/27
Σ1/n(2n,n)=π√3/9
3Σ1/n^2(2n,n)=ζ(2)
12Σ(2-√3)^n/n^2(2n,n)=ζ(2)
5/2Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=ζ(3)
36/17Σ1/n^4(2n,n)=ζ(4)
これらは,
Σ1/n^k(2n,n)
あるいは
Σ(-1)^(n-1)/n^k(2n,n)
と書けるが,もし以上ことからζ(2),ζ(3),ζ(4),・・・がΣ1/n^k(2n,n)あるいはΣ(-1)^(n-1)/n^k(2n,n)の簡単な有理数倍になっていると予想するのは当然の成りゆきであろう.
ζ(5)=R*Σ(-1)^(n-1)/n^5(2n,n)
と予想されるが,予想に反して,Rはたとえ有理数であったにしても,簡単なものにはならないらしい.
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【雑感】
答えの方から逆に考えれば
Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=Σ1/n^3*(2/5に収束する無限級数)
Σ1/n^4(2n,n)=Σ1/n^4*(17/36に収束する無限級数)
になるはずだが,これらは一体どうやって求められたのだろう?
公式集をめくって探索していくうちに,
新数学公式集T(初等関数),丸善
のなかに,以下の2重級数公式を発見した(k:1~∞,m:1~k).
Σ1/(k+1)^2*(Σ1/m)=ζ(3)
Σ1/(k+1)^3*(Σ1/m)=π^4/360
ζ(4)=π^4/90であるから,後者は
4Σ1/(k+1)^3*(Σ1/m)=ζ(4)
とも書ける.これらの公式が証明の役に立つかも知れない.
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