オイラーはフェルマーの定理を一般化・拡張した.φ(m)を1からm−1までの整数のうちいくつがmと公約数をもたないかをいう数論的関数とすると,オイラーの定理は記号
(a,m)=1→m|a^φ(m)-1−1
を用いて表される.mが素数ならφ(m)=m−1より,フェルマーの定理に一致する.
m=10のとき,φ(m)=4であるから,
10|a^4−1
が得られる.言い換えれば,2と5を因数にもたない任意の数aの4乗の最後の桁は1である.
3^4=81,7^4=2401,9^4=6561,13^4=28561
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【1】10を原始根とする素数
1/7=0.142857142857・・・
(循環節:142758の長さ6)
1/17=0.0588235294117647・・・
(循環節:0588235294117647の長さ16)
のように,1/pを10進法で小数展開したときの循環節の長さがp−1となる特別な素数を10を原始根とする素数(あるいはfull-reptendな素数)といいます.
10を原始根とする素数,たとえば,
7,17,19,23,29,47,59,61,97,・・・
の密度について,アルティンは
π10(x)=Cx/(logx)
と予想しています.ただし,pを素数として,Cは
C=Π(1−1/p(p−1))=0.37395・・・(アルティンの定数)
もし,これが正しいとすれば,このような素数は無限にあり,素数全体のうち約3/8を占めることになるのですが,残念ながら証明されていません.
しかしながら,リーマン予想:ζ(s)の零点がs=−2,−4,・・・,−2nとs=1/2+tiの線上にある:が正しいと仮定するとアルティン予想の成り立つことが証明できることがわかっています.
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【2】循環分数の周期
なぜ1/7は長さ6の周期をもつのだろうか? 1/3の場合,
1/3=3/9=3/(10−1)=3/10・1/(1−1/10)
=3/10・{1+1/10+1/100+・・・}
と同様に考えると
7f=10^k−1
となる最小の正の因数fを探していることになる.言い換えれば,
10^k=1 (mod7)
となる最小のkを探していることになるが,これは位数の定義と同じである.
k=ord710=6
f=(10^6−1)/7=142857
起こり得る最長の周期p−1は,10がpの原始根であるときに起こるというわけである.
10進分数の周期について述べてきたことは,他の基底に対してもあてはまる.たとえば,2進法における1/3は周期長
T=ord23=2
をもち,実際,
1/3=0.01010・・・
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【3】ウィルソンの定理のもうひとつの証明
(Q)pを素数とするとき,
(p−1)!=−1 (mod p)
p|(p−1)!+1
を証明せよ(ウィルソンの定理)
(A)x=1,2,・・・,p−1に対して,フェルマーの定理より
x^p-1=1 (modp)
が成り立つ.
したがって,これらp−1個は方程式のすべての解であり,
x^p-1−1=(x−1)(x−2)(x−p+1) (modp)
と書くことができる.x=pを代入すると
p^p-1−1=(p−1)(p−2)(p−p+1)=(p−1)!
(modp)
p^p-1=0 (modp)
より
(p−1)!=−1 (mod p)
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【4】ウィルソンの定理の原始根による証明
(A)gが素数pの原始根であるとき,k=1,2,・・・,p−1に対する
g^k (modp)
は整数1,2,・・・,p−1の順列であるから,
(p−1)!=1・2・・・(p−1)=g・g^2・・・g^p-1=g^p(p-1)/2=g^(p-1)/2 (modp)
フェルマーの定理より
g^(p-1)=1 (modp)
したがって
g^(p-1)/2=±1 (modp)
となるが,正の符号はgが原始根であり,p−1はg^mが1と合同である最小の指数mであるから不可能.
以上より,
g^(p-1)/2=(p−1)!=−1 (modp)
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