■助変数表示と代数曲線表示

 パラメータ表示された外サイクロイドと内サイクロイドの代数曲線表示については以前に取り上げたことがある.たとえば,アステロイドの場合,

  (x^2+y^2−1)^3+27x^2y^2=0

 バラ曲線についても代数曲線表示は可能で,

  3つ葉のバラ:(x^2+y^2)^2+3xー2y−y^3=0

  4つ葉のバラ:(x^2+y^2)^3−4x^2y^2=0

一般に,グランディのバラ曲線:r=acosnθはn=1のとき円,n=2のとき(x^2+y^2)^1/2=2a^2(x^2−y^2)で4葉形,一般に花びらの数mはnが奇数のときm=n,nが偶数のときm=2nとなる.

 また,レムニスケートの代数曲線表示は

  (x^2+y^2)^2=α(x^2−y2)

  x^2(1−x^2)−y2=0

などとなる.今回のコラムではこれらと関連する記事を取り上げたい.

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【1】レムニスケートのパラメータ表示

 原点を中心とする半径1の円の円周上の点を(x,y)とすれば,第3の変数θを媒介として,x=cosθ,y=sinθと表されます.θは(x,y)と(0,0),θ/2は(x,y)と(−1,0)を結ぶ直線とx軸とのなす角を表しています.

 さらにt=tan(θ/2)とすると

  tan(θ/2)=sinθ/(1+cosθ),

  cosθ=(1−t^2)/(1+t^2),

  sinθ=2t/(1+t^2)より,

  x=±(1−t^2)/(1+t^2),

  y=2t/(1+t^2)   (−1≦t≦1)

と表すことができます.

 また,a=1/√2のとき,レムニスケート:r^2 =cos2θ,(x^2 +y^2 )^2 =x^2 −y^2 は,

  x=cosθ/(1+sin^2θ)

  y=sinθcosθ/(1+sin^2θ)

ここで,

sinθ=(1−t^2)/(1+t^2)

cosθ=2t/(1+t^2)

とおくと,

  x=t(1+t^2)/(1+t^4 )

  y=t(1−t^2)/(1+t^4 )

のようにパラメトライズすることができます.

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【2】特異点

 代数曲線表示は特異点と関係している.次数dの既約曲線は高々(d−1,2)個の特異点をもつ.たとえば,既約な3次曲線は重複度2の特異点を高々ひとつもつ.その特異点において,3次曲線は2つの異なる接線をもつか

  例:デカルトの葉線:x^3+x^2−y^2=0

または二重の接線をひとつもつことができる.

  例:ニールの放物線:x^3−y^2=0

 既約な4次曲線は重複度2の特異点を3個まで,または重複度3の特異点をひとつもつことができる.

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【3】円と双葉のあいだには?

 円の4分の1周の長さを求めるのに,y=(1-x^2)^(1/2)に対し,

  ∫(0,1)(1+(dy/dx)^2)^(1/2)dx

を計算すると,これは

  ∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx

となります.そこで

  f(x)=1/(1-x^2)^(1/2)

  2∫(0,1)f(x)dx=3.141592・・・=π

となり,これをπの定義とし,完全円積分と呼ぶことにします.

  F(z)=∫(0,z)f(x)dx

は不完全円積分ですが,これから

  sinω=F^(-1)(ω),cosω=F^(-1)(π/2-ω)

と定義すると,逆正弦関数

  sin^(-1)z=∫(0,z)f(x)dx

が得られます.

 ところで,

  ∫1/(1-x^2)^(1/2)dx

は円,

  ∫1/(1-x^4)^(1/2)dx

はレムニスケートに対応していましたが,周長が

  ∫1/(1-x^3)^(1/2)dx

  ∫1/(1-r^3)^(1/2)dx

で表される曲線はどのようなものになるでしょうか?

 この円と双葉の中間に位置する幾何学的対象物は,微分方程式

  (1+(dy/dx)^2)^(1/2)=1/(1-x^3)^(1/2)

  dy/dx=(x^3/(1-x^3))^(1/2)

あるいは

  {1+(rdθ/dr)^2}^(1/2)=1/(1-r^3)^(1/2)

  dθ/dr=(r/(1-r^3))^(1/2)

を満たさなければなりません.

 直交座標より極座標を考える方が自然と思えるので,極座標の方で示しますが,r^3=tとおいて微分方程式を解くと,不完全ベータ関数

  θ=1/3∫t^(-1/2)(1-t)^(1/2)dt

が得られます.しかし,これでは正体がつかめません.そこで,試行錯誤的に求めてみることにしました.

 まず,候補にあげられたのが

  r=cos(aθ)  (正葉曲線,バラ曲線)

です.この曲線では,a=1のとき,

  1+(rdθ/dr)^2=1/(1-r^2)

となります.

 これまでの結果から,

  r=cosθのとき,1+(rdθ/dr)^2=1/(1-r^2)

  r^2=cos2θのとき,1+(rdθ/dr)^2=1/(1-r^4)

がわかったわけですから,求める曲線は

  r^(3/2)=cos(3/2θ)

に違いありません.計算してみると,確かに

  1+(rdθ/dr)^2=1/(1-r^3)

が得られました.

 大ざっぱにプロットしてみたところでは,三つ葉型曲線の半分になるのですが,r^(3/2)=cos(3θ/2)がどのような曲線になるのか,各自が実際に描いてみることをお勧めします.また,この曲線が直交座標でどのように書けるか,直してみるのも面白いかもしれません.

  r^2=x^2+y^2,x=rcosθ,y=rsinθ

  cos3θ=4cos^3θ−3cosθ

  cos^2(3θ/2)=(1+cos3θ)/2=(4cos^3θ−3cosθ+1)/2

ですから

  2r^3−1=4x^3/r^3−3x/r

  2r^6−r^3=4x^3−3xr^2

  (2r^6−4x^3+3xr^2)^2=r^6

  (2(x^2+y^2)^3−4x^3+3x(x^2+y^2))^2=(x^2+y^2)^3 → 12次曲線

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【4】雑感

 超レムニスケート積分

  ∫1/(1-x^n)^(1/2)dx

の幾何学的対象物がグランディのバラ曲線:r=acosnθの類似であることを思いついたのが2002年ですから,それからずいぶん年月が経ったことになります.

 当初は

  r=1(円)

  r^2=cos2θ(レムニスケート)

を補間することを考えていたのですが,うまくいかず

  r=cosθ(円)

  r^2=cos2θ(レムニスケート)

を補間して

  r^n/2=cos(nθ/2)

としたのが成功のもとでした.

  r^n/2=cos(nθ/2)

  r^n=(1+cosnθ)/2

  2r^n−1=cosnθ=(x/rのn次多項式)

ですから,この曲線は代数曲線になることがわかります.次数はnが偶数のときn次式ですが,奇数のとき4n次式になります.

[1]n=1

  2r−1=cosθ=x/r

  2r^2−r=x

  (2r^2−x)^2=r^2

  (2(x^2+y^2)−x)^2=x^2+y^2 → 4次式

[2]n=2

  r=cosθ=x/r

  r^2=x

  x^2+y^2=x

  (x−1/2)^2+y^2=1/4 → 2次式(円)

[3]n=3 → 12次式

[4]n=4 → 4次式

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