[Q]xがmを法とする完全剰余系を動くとき,
Σexp(2πi・ax/m)=m,(a,m)≠1
Σexp(2πi・ax/m)=0,(a,m)=0
であることを証明せよ.
[A]aがmの倍数ならばΣexp(2πi・ax/m)=Σ1=m
aがmの倍数でないならば
Σexp(2πi・ax/m)={exp(2πi・am/m)−1}/{exp(2πi・a/m)−1}=0
今回のコラムでは「フェルマーの最終定理と有限体」,「ガウス和と有限テータ関数」,「2つのガウス和」に出てきた2つのガウス和について再度まとめておきます.
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【1】ガウス和(mod pのフーリエ解析)
位数p−1の巡回群の指標には1のp乗根が対応して,
ζ=exp(2πi/p)
として
τ(χ)=Σχ(x)ζ^x (x=1~p-1)
を指標χ(x)に属するガウス和と呼びます.すなわち,ガウス和はFpに1のp乗根ζを添加した拡大体におけるχの1次結合であり,mod pのフーリエ解析になっているというわけです.
平方剰余のときχ=1,平方非剰余のときχ=−1とすると,ガウスは
p=1(mod4) → τ(χ)=√p
p=3(mod4) → τ(χ)=i√p
が成り立つことを1805年に証明したのですが,解決まで数年を要したといわれています.
ここでは,aを整数とし
U(a,p)=Σ(x/p)exp(2πi・ax/p) (x=1~p-1)
とおきます.
[Q](a,p)=1ならば,|U(a,p)|=√pであることを証明せよ.
[A]U(a,p)の共役複素数をU`(a,p)とすると,
|U(a,p)|^2=U(a,p)U`(a,p)=ΣΣ(t/p)exp(2πiax(t−1)/p)
ここで,t=1に対してはxに関する総和はp−1となり,t>1に対しては−(t/p)となる,ゆえに,
|U(a,p)|^2=p−1−Σ(t/p)=p
[Q](a/p)=U(a,p)/U(1,p)であることを証明せよ.
[A](a,p)=pのときは明らか.(a,p)=1のときは
U(a,p)=(a/p)Σ(ax/p)exp(2πiax/p)=(a/p)U(1,p)
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【2】もうひとつのガウス和
有限フーリエ級数
F(m)=Σ(k=0~m-1)exp(i(2π/m)k)
を幾何学的に解釈すると,原点から正m角形の頂点に向かって一様に放射状に出る長さ1のベクトルの和であるから,値は0になる.
次に,ガウスが正n角形の研究中に出会った関数
G(m)=Σ(k=0~m-1)exp(−i(2π/m)k^2)
について考える.kが2乗されていることで,全方向の一様性がなくなってしまい,図形的にみることが難しくなる.
この関数は長い間ガウスの心を占めていた数学の問題で,現在,ガウス和と呼ばれている.偉大なガウスでさえもG(m)の値を得るのに数年を要したといわれている.
ガウスはこの問題を数論的な手法により1805年に解決したのであるが,その30年後の1835年,ディリクレがフーリエ級数を用いて簡潔な証明を生み出した.ガウス和は回折理論で有名なフレネル積分
∫(0,∞)sin(ax^2)dx=∫(0,∞)cos(ax^2)dx=1/2√(π/2a)
に帰着され,最終的な結論だけを述べると
m=0(mod4) → G(m)=(1−i)√m
m=1(mod4) → G(m)=√m
m=2(mod4) → G(m)=0
m=3(mod4) → G(m)=−i√m
指数の符号をプラスにした
H(m)=Σ(k=0~m-1)exp(i(2π/m)k^2)
はG(m)と複素共役だから,G(m)がわかればH(m)もわかる.
m=0(mod4) → H(m)=(1+i)√m
m=1(mod4) → H(m)=√m
m=2(mod4) → H(m)=0
m=3(mod4) → H(m)=i√m
奇数のmに対して,
|H(m)|^2=m
である.また,m=pqで置き換えると,
H(pq)=(−1)^(p-1)(q-1)/4H(p)H(q)
ガウス和は有限テータ関数として解釈することができるが,ヤコビのテータ関数は解析数論における数多くの深遠な問題と密接に結びついている.また,ガウス和は物理や通信における散乱,たとえば,コンサート・ホールの音響を弱めないで拡散させることなどに応用されているのである.
ガウス和の指数を2乗和k^2に制限する理由はなく,k^nすなわちガウスの3乗和,4乗和,5乗和,6乗和,・・・と一般化することもできる.また,
H(m,k)=Σ(k=0~k)exp(i(2π/m)k^2)
と定義する.mを固定して,k=0,1,・・・,m−1と動かすと不完全ガウス和となる.
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ここでは,(a,m)=1としてが
S(a,m)=Σ(k=0~m-1)exp(2πi・ax^2/m)
とおく.
[Q]S(a,p)=U(a,p)=√pであることを証明せよ.
[A]rは平方剰余を動き,nは平方非剰余を動くとすると,
S(a,p)=1+2Σexp(2πi・ar/p)
これより,
0=1+Σexp(2πi・ar/p)+Σexp(2πi・an/p)
辺同士引けばS(a,p)=U(a,p)が得られる.
[Q]m=1(mod2) → S(a,m)=√m
m=2(mod4) → S(a,m)=0
m=0(mod4) → S(a,m)=√2m
を証明せよ.
[A]
|S(a,m)|^2=S(a,m)S`(a,m)=ΣΣ(t/p)exp(2πi・(at^2+2tx)/m)
ここで,与えられたt=1に対して,xに関する総和は2tはmで割り切れるか否かに従ってmexp(2πiat^2/m)あるいは0を与える.
mが奇数ならば|S(a,m)|^2=mexp(2πia0^2/m)=m
mが偶数(m=2m’)ならば
|S(a,m)|^2=m{exp(2πia0^2/m)+exp(2πiam’^2/m)}=0(m’が奇数),2m(m’が偶数)
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【3】ヤコビ和
また,2つの指標χ(x),φ(x)に対して,ヤコビ和と呼ばれる複素数
J(χ,φ)=Σχ(x)φ(1-x)=τ(χ)τ(φ)/τ(χφ)
が定義されます.ガウス和の定義はガンマ関数
Γ(s)=∫(0,∞)x^(s-1)exp(-x)dx
ヤコビ和はベータ関数
B(p,q)=∫(0,1)x^(p-1)(1−x)^(q-1)dx=Γ(p)Γ(q)/Γ(p+q)
と非常によく似ていています.ガンマ関数とベータ関数が実数世界の兄弟分にあたるように,ガウス和とヤコビ和もFp世界の兄弟分というわけです.
φ=χの場合,これらの大きさは
|τ(χ)|=√p
|J(χ,χ)|=√p
|J(χ~,χ~)|=√p
|J(χ,χ)|^2=J(χ,χ)J(χ~,χ~)=p
で与えられます.
互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れません.
a=3k → a^2=9k^2
a=3k+1 → a^2=9k^2+6k+1
a=3k+2 → a^2=9k^2+12k+4
より,a^2を3で割ったときの余りは0か1になります.0になるのはaが3の倍数のときです.
b^2に対しても同じことが成り立ちますから,a^2+b^2を3で割ると,余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかなりません.0+0はaもbも3の倍数であることに対応していて,仮定に反します.
4n+3の数はa^2+b^2の形にならないことも簡単に示すことができます.
a=4k → a^2=0 (mod 4)
a=4k+1 → a^2=1 (mod 4)
a=4k+2 → a^2=0 (mod 4)
a=4k+3 → a^2=1 (mod 4)
したがって,a^2+b^2を4で割ったときの余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかならないので,この主張が示されました.
pを素数として,p=x^2+y^2を満たす整数x,yが存在するための必要十分条件は
p=1(mod4)またはp=2
であることは有名です.
それに較べてあまり知られていないのですが,p=x^2−xy+y^2を満たす整数x,yが存在するための必要十分条件は
p=1(mod3)またはp=3
が成り立つことです.
ヤコビ和を使うと(←)が簡単に証明できます.
(証明)1の原始3乗根
ω=(−1+√3)/2,ω~=(−1−√3)/2
ω^2=ω~,1+ω+ω^2=0
を使うことにします.
p=2(mod3)であれば,x^2−xy+y^2を割った余りは2になり得ないので解なし.p=1(mod3)であれば,
J(χ,χ)=x+yω,J(χ~,χ~)=x+yω~
と表される.
p=|J(χ,χ)|^2=J(χ,χ)J(χ~,χ~)
=(x+yω)(x+yω~)=x^2−xy+y^2
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