【1】原始根とフェルマーの定理
有限体Fpの0以外の元をaとします.このとき,aをp回足すとはじめて0になります.素数7を例にとって,F7でa=3を何回もたしてみると
3+3=6
3+3+3=6+3=2
3+3+3+3=2+3=5
3+3+3+3+3=5+3=1
3+3+3+3+3+3=1+3=4
3+3+3+3+3+3+3=4+3=0
このpを有限体Fpの「標数」といいます.
また,aをp−1回掛けると1になります.F7において
a\^n 1 2 3 4 5 6
1 1 1 1 1 1 1
2 2 4 1 2 4 1
3 3 2 6 4 5 1
4 4 2 1 4 2 1
5 5 4 6 2 3 1
6 6 1 6 1 6 1
最後の列はすべて1です.
このように,pで割り切れない整数aに対して,フェルマーの(小)定理
a^(p-1)=1 (mod p)
が成り立つというわけです.また,このことからa^(p-2)がaの逆元となることも理解されます.
1/a=a^(p-2)
F7では,
1/3=3^5=5,1/6=6^5=6
この表において,1は1乗してはじめて1になりますが,2は3乗して,3は6乗して,4は3乗して,5は6乗して,6は2乗してはじめて1になります.何乗かして1になるとき,その最小のものを「位数」と呼びます.p=7のとき,a=1,2,3,4,5,6の位数はそれぞれ1,3,6,3,6,2ですが,ここで位数として現れる数はすべて6=7−1の約数です.一般にFpの位数はp−1の約数となります.
また,pと互いに素な整数aがp−1乗してはじめて1になるとき,aを「原始根」といいます.F7においては3,5が原始根です.
F5においては
a\^n 1 2 3 4
1 1 1 1 1
2 2 4 3 1
3 3 4 2 1
4 4 1 4 1
より2,3が原始根となります.
任意の素数について原始根rは少なくとも1つ存在します.1つとは限らないため,原始根rの選び方は1通りではありませんが,1つ選んで固定します.そしてFpにおける原始根rが与えられたとき,0以外のすべての元は,
a=r^i (i=0〜p-2)
の形に表すことができます.iを(rに関する)「指数」と呼びます.Fpの0以外のすべての元はrを生成元とする位数p−1の巡回群というわけです.
F7において,原始根r=3とすると
i : 0,1,2,3,4,5
a=r^i: 1,3,2,6,4,5
ですから,6の指数は3,1の指数は0ということになります.また,原始根としてr=5を選ぶと
i : 0,1,2,3,4,5
a=r^i: 1,5,4,6,2,3
で,同様に6の指数は3,1の指数は0となります.
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【2】まとめ
Fpにおける原始根aが与えられたとき,0以外のすべての元は,
a^i (i=0〜p-2)
の形に表すことができます.
したがって,kをp−1で割り切れないものとすると各逆数1/1,1/2^k,・・・,1/(p−1)^k (mod p)は,すべての剰余1,2^k,・・・,(p−1)^k (mod p)をきっかり1回だけ覆うという意味で,再配列によって
1+1/2^k+1/3^k+・・・+1/(p−1)^k
=1+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k (mod p)
となります.
また, 1,2,・・・,p−1は順序を無視すれば,法pに関する原始根をgとすると法pに関してg,2g,・・・,(p−1)gと合同,すなわち,1,2^k,・・・,(p−1)^k (mod p)は,g,(2g)^k,・・・,((p−1)g)^k (mod p)をきっかり1回だけ覆うという意味で,再配列によって
1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k
=g^k+(2g)^k+(3g)^k+・・・+((p−1)g)^k (mod p)
となるのです.
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