■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その3)

[1]単一種による空間充填

[2]複数の種類による空間充填

[3]非空間充填

と分類すると,4次元での空間充填の性質から

[1]8胞体,16胞体,24胞体(これらはどれもRPから構成できる)

[2]なし

[3]5胞体,120胞体,600胞体

に分類される.

 ここでは[3]の元素数が3,[1]の元素数が≧1であることを示す.

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【1】5胞体,120胞体,600胞体の元素数

 5胞体,120胞体,600胞体をそれぞれP,Q,Rとし,そのデーン不変量をD(P),D(Q),D(R)で表すことにする.そして,P,Q,Rは2種類以下の元素α,βから構成できるものと仮定する.

  P=a1α+a2β

  Q=b1α+b2β

  R=c1α+c2β   (a,b,cは整数)

[補] P,Q,Rはそれぞれデーン不変量が異なるので,1種類の元素に分解することはできないことは明らかであるが,この定式化はその場合も含んでいる.

 デーン不変量の線形加法性より,

  D(P)=a1D(α)+a2D(β)

  D(Q)=b1D(α)+b2D(β)

  D(R)=c1D(α)+c2D(β)

 1,2式より

  D(α)=(b2D(P)−a2D(Q))/Δ

  D(β)=(a1D(Q)−b1D(P))/Δ,Δ=a1b2−a2b1

3式に代入して整理すると,

  L・D(R)=M・D(P)+N・D(Q)   (L,M,Nは整数)

 ここで,P,Q,Rは正多胞体であるから二胞角は一定,

[注]多胞体Pに対し二面角をδiとすると,デーン不変量D(P)はすべての胞境界で二胞角の和をとり,mod πで還元したものとして定義される.

  D(P)=Σnδ   (mod π)

 したがって,

  L・D(R)=M・D(P)+N・D(Q)   (L,M,Nは整数)

は二胞角の言葉に翻訳することができて,

  L’δ6=M’δ1+N’δ5   (mod π)   (L’,M’,N’は整数)

 さらに,δ6=4π/3−δ1,δ5=4π/5より,

  N1δ1=0   (mod π)

しかし,この式が成り立たないことは,以下のごとく証明することができる.

  正5胞体 → cosδ1=1/4,sinδ1=√15/4 (75°ほど)

  u=1/4+i√15/4,u−1/4=i√15/4

より,uは2次方程式2u^2−u+2=0の解であるから,

  2u^2=u−2

  2^2u^3=−3u−2

  2^3u^4=−7u+6

  2^m-1u^m=a1u+b1   (a1,b1は整数でa1≠0,b1≠0)

が成り立つと仮定すると,m+1のとき

  2^mu^m+1=2a1u^2+2b1u=a1(u−2)+2b1u

 =(a1+2b1)u−2a1

であるから

  a1≠0,b1=0 mod 2

を示すことができる.

 これより,

  Im(n^N1-1u^N1)≠0すなわちN1δ1≠0

であるから,正多胞体P,Q,Rの元素数は3であることがいえる.

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【2】8胞体,16胞体,24胞体の元素数

 8胞体,16胞体,24胞体をそれぞれP,Q,Rとし,そのデーン不変量をD(P),D(Q),D(R)で表すことにする.P,Q,Rはそれぞれデーン不変量が等しいので,1種類の元素で構成できるものと仮定する.

  P=a1α,Q=b1α,R=c1α   (a,b,cは整数)

デーン不変量の線形加法性より,

  D(P)=a1D(α)

  D(Q)=b1D(α)

  D(R)=c1D(α)

  L・D(R)=M・D(P)=N・D(Q)

  L’δ24=M’δ8=N’δ16   (mod π)

  (L,M,N,L’,M’,N’は整数)

が矛盾なく成り立つので,[1]を合わせると元素数≧4となる.

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【3】雑感

 2種類の立体で空間充填形ができても,両方をうまく組み合わせてその次元の立方体ができるとは限らず,また,もとの2種類がさらに分割して同一の素片から組み立てられるとも限らない.3次元空間での正八面体と正四面体による空間充填がその典型例である.

 最初からデーンの不変量を持ち出すのではなく,空間充填の性質を分類した後にデーンの不変量を用いることによって,元素数4以上が主張できたことになる.4次元正多胞体元素定理もこれにて一件落着とあいなった.

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