ミンコフスキーはアインシュタインの先生として有名で,相対論における基本概念はミンコフスキーにその起源をたどることができます.彼は数論家として出発しましたが,研究を進めるにしたがって次第に幾何学に興味を惹かれるようになり,幾何学的方法を用いて数論を研究する「数の幾何学」と呼ばれる新しい数学分野を打ち立てました.
格子点定理が数の幾何学の基礎となっているのですが,格子点定理は次のように述べることができます.
「平面(n次元空間)上の任意の単位格子において,1つの格子点を中心として1辺の長さが2の正方形(面積4の平行四辺形,面積2^nの中心対称な凸体)を任意の向きにおいてみると,内部あるいは境界上にもうひとつの格子点が必ず存在する.」
この定理は非常に単純であるにもかかわらず,他の方法では解決することのできなかった数論における多くの問題を解明したのですが,格子点定理を用いると,初等的な定理,たとえば,
「4k+1の形の素数はx^2^+y^2の形に書ける」
「6k+1の形の素数はx^2^+3y^2の形に書ける」
「8k+1の形の素数はx^2^+2y^2の形に書ける」
なども証明することができます.2次形式の理論が発展していく段階では,ミンコフスキーが非常に大きな貢献をしていて,格子点の幾何学はミンコフスキーの「数の幾何学」に端を発するのです.
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[1]x^2+1=0 (mod p)はpが4m+1の形をしているとき,そのときに限り解ける.
合同式が解けるための条件は
(−1/p)=(−1)^(p-1)/2
[2]x^2+2=0 (mod p)はpが8m+1または8m+3の形をしているとき,そのときに限り解ける.
合同式が解けるための条件は
(2/p)=(−1)^(p^2-1)/8
[3]x^2+3=0 (mod p)はpが6m+1の形をしているとき,そのときに限り解ける.
合同式は(−3/p)=1ととき,そのときに限り解ける.
(−3/p)=(p/3)
pが6m+1の形のとき1,6m+5の形のとき−1
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[Q]整数mを
m=x^2+y^2,(x,y)=1
という形に表す仕方の数は,
z^2+1=0 (mod m)
の解の個数に等しいことを証明せよ.
[A]もしmがm=x^2+y^2,(x,y)=1の形に表現されているならば,x=zy(mod m)の解,z=z0(mod m)はまたz^2+1=0(mod m)の解である.したがって,z^2+1=0(mod m)の各解にはm=x^2+y^2,(x,y)=1の形の少なくともひとつの表示が対応する.
任意の実数αは
α=P/Q+θ/Qn
0≦Q<n,(P,Q)=1,|θ|<1
の形に表される.→コラム「ファレイ数列(その2)」参照.実際,τ=√mとおけば
z0/m=P/Q+θ/Q√m,
0≦Q<√m,(P,Q)=1,|θ|<1
のよう書ける.ゆえに,
z0Q=mP+r,|r|<√m
さらに,z^2+1=0(mod m)から従うように,
|r|^2+Q^2=0 (mod m)
このことと,0<|r|^2+Q^2<2mから
m=|r|^2+Q^2
となる.
ここで,
1=(r^2+Q^2)/m={(z0Q−mP)z0Q−rmP+Q^2}/m={(z0Q−mP)z0+Q}Q/m−rP
(z0Q−mP)z0+Qはmで割り切れるから
1=−rP(mod m)→(|r|,Q)=1
もし,|r|=rならばr=z0Q(mod m)だから,m=|r|^2+Q^2という解は,z^2+1=0(mod m)という解に対応する.もし,|r|=−rならばz0r=z0^2Q(mod m),Q=z0|r|(mod m)だから,m=|r|^2+Q^2という解は,z^2+1=0(mod m)という解に対応する.
各解の対応する
m=x^2+y^2,(x,y)=1
は2つ以上はない.実際,
z^2+1=0 (mod m)
の同一の解にm=x^2+y^2,m=x1^2+y1^2が対応したとすれば,x=z0y,x1=z0y(mod m)からxy1=x1y(mod m)が従う.したがって,(x,y)=1,(x1,y1)=1を考慮すれば,x=x1,y=y1となる.
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[Q]a=2または3,pを素数とすれば
p=x^2+ay^2
という形に表す仕方の数は,
z^2+a=0 (mod p)
の解の個数の半分に等しいことを証明せよ.
[A]もしmがm=x^2+ay^2=1の形に表現されているならば,x=zy(mod m)の解,z=z0(mod m)はまたz^2+a=0(mod m)の解である.
z^2+1=0(mod m)の解がひとつわかったとして,それに対応する表示p=x^2+ay^2をの形の少なくともひとつを見つけだそう.実際,τ=√pとおけば
z0/p=P/Q+θ/Q√p,
0≦Q<√p,(P,Q)=1,|θ|<1
のよう書ける.ゆえに,z0Q=r(mod p),|r|<√p.
さらに,z^2+a=0(mod p)から従うように,
|r|^2+aQ^2=0 (mod p)
このことと,0<|r|^2+aQ^2<(1+a)pから,a=2のときは
|r|^2+2Q^2=pまたは|r|^2+2Q^2=2p
でなければならない.後者の場合には|r|は偶数であって,
|r|=2r1,p=Q^2+2r1^2
となる.
a=3のときは
|r|^2+3Q^2=pまたは|r|^2+3Q^2=2pまたは|r|^2+3Q^2=3p
でなければならない.しかし,第2の場合は4を法として左辺は4,右辺は2であるから不可能.第3の場合には|r|は3の倍数であって,
|r|=3r1,p=Q^2+3r1^2
となる.
z^2+a=0 (mod m)
の同一の解にp=x^2+y^2,p=x1^2+y1^2が対応したとすれば,x=x1,y=y1となることがわかる.もし,これらが相異なる解に対応するとすれば,x=z0y,x1=−z0y(mod m)からxy1+x1y=0(mod p)となるが,これは0<(xy1+x1y)^2≦(x^2+y^2)(x1^2+y1^2)<p^2より不可能である.
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