[Q]正多角形面体のうち,何種類かを用いて空間充填できるものをすべて決定したい(JZ問題).
[A]
(a)立方体だけ
(b)正四面体+正八面体
(c)J91充填
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【1】考慮すべき正多角形面体
8種類あるデルタ多面体に対して,正方形面のみによる凸多面体は立方体,正五角形面のみによる凸多面体は正十二面体しかない.正六角形面のみによる凸多面体はもはや存在しない.また,92種類のJZ多面体の面は正三角形,正四角形,正五角形,正六角形,正八角形,正十角形のいずれかである.アルキメデスの平面充填形の最大正n角形はn=12であるが,アルキメデス立体,ジョンソン立体ではn=10になる.n(≧11)角形を含む面正則凸多面体は角柱か反角柱だけである.
したがって,ここで考慮すべき正多角形面体としては
[1]JZ多面体92種(ザルガラー多面体あるいはジョンソン多面体という別名でも呼ばれている)
[2]正多面体5種
[3]準正多面体13種
[4]アルキメデス角柱5種(Π3,Π5,Π6,Π8,Π10,Π4は立方体)
[5]アルキメデス反角柱5種(A4,A5,A6,A8,A10,A3は正八面体)
の計120種もある.
J91を含む空間充填の発見には驚かされたが,この考えの延長線上ではいつまでたってもらちがあかない.120種の組み合わせについて全数探索する必要があるのだが,コンピュータの助けを借りるとしても膨大な計算が必要になるだろう.
コンピュータ計算による網羅的な探求の例としては,以下の2つの有名な極値問題が解決されたことがあげられる.
(1)1988年,ヘールズはケプラーの球の詰め込み問題(1611年)が正しいことを示した.
(2)1976年,ハーケンとアッペルは4色問題(1852年)が正しいことを示した.
JZ問題もコンピュータによる解析なしに解決し得ない問題であるが,探索の数を減らすことはできないだろうか?
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【2】JZ多面体の元素定理
正多角形体や一様多面体をすべて分類することは単なる理論上の興味にとどまらず,数学の他分野とも面白い関連がある.正多角形面のみからなる多面体は正多面体(プラトン体),準正多面体(アルキメデス体),角柱,反角柱を除くと92種類存在することをジョンソンとザルガラーは報告している.デルタ多面体やミラーの多面体も正多角形面体に含まれる.
ジョンソン・ザルガラー多面体の多くは,正多角面体を互いにつなぎ合わせることで作ることができる.ジョンソンは正多角面体に分けることができない分解不可能な多面体を基本多面体と呼んだ.これは「元素」と言い換えてもよいであろう.プラトン立体とアルキメデス立体の破片体以外の基本多面体は8個あるが,92種類もあるザルガラー多面体を整理するには,分解可能性という考え方を取り入れると便利である.
[参]関口次郎「多面体の数理とグラフィックス」牧野書店
のよると,分類不可能なザルガラー多面体は角柱,反角柱を除くと28種類存在することが知られている(M1〜M28).正多面体,準正多面体や分解可能なザルガラー多面体はこれら28種類から合成することができるのである.
アルキメデス角柱(Π3,Π5,Π6,Π8,Π10)とアルキメデス反角柱(A4,A5,A6,A8,A10)を加えても38種類であり,120種類の多面体の組み合わせに較べれば大幅に探索の数を減らせることが期待される.これがJZ問題を解くのに有用に働いてくれることを願っている.
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