階乗n!の近似値を与える公式として有名なスターリングの公式があります.
n! 〜 √(2πn)n^ne^(-n)
スターリングの公式では,n=8のとき相対誤差は約1%ですが,nが大きくなるほど相対誤差は小さくなります.
まず,スターリングの公式を誘導してみましょう.
logn!=log1+log2+・・・+logn
=Σlogx
ここで,y=logxのグラフを幅が1の長方形に分割していくと,xが十分大きければ相対的に和の間隔が小さくなるので,和は積分に置き換えられます.
Σlogx≒∫(1,n)logtdt
logxの原始関数は置換積分よりxlogx−x+Cと計算され,区間[1,n]ですから,
∫(1,n)logtdt=nlogn−n+1
となります.
log(n−1)!<∫(1,n)logtdt<logn!
より,n!の下からの評価は
∫(1,n)logtdt<logn!
したがって,
n!>exp(nlogn−n+1)=en^ne^(-n)=e(n/e)^n
が得られます.
また,上からの評価は
logn!<∫(1,n+1)logtdt
より,
n!<exp((n+1)log(n+1)−n)=(n+1)^(n+1)/e^n
したがって,
n!=n(n−1)!<nexp(nlogn−n+1)=en(n/e)^n
が得られます.
e(n/e)^n<n!<en(n/e)^n
ここで,スターリングの公式
n! 〜 √(2πn)(n/e)^n
で与えられるような漸近挙動を得るには,もっと注意深い解析が必要になることがわかりしたますが,
e<√(2πn)<en
より,ここでは,スターリングの公式が上下の評価式の中間に位置することだけ指摘しておきます.
e(n/e)^n<√(2πn)(n/e)^n<en(n/e)^n
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【1】スターリングの公式の初等的証明
Σlogx≒∫(1,x)logtdt
logxの原始関数は置換積分よりxlogx−x+Cと計算されますから,右辺はxlogx−x+1となります.したがって,
n!≒en^nexp(−n)
が得られます.
もっと正確に近似すると
∫(0,n)logtdt<logn!<∫(1,n+1)logtdt
より
nlogn−n<logn!<(n+1)log(n+1)−n
したがって,両辺の相加平均に近い(n+1/2)logn−nでlogn!を近似できることになり,
∫(1,x)logtdt
=log1+log2+・・・+logx−1/2logx+δ
であること,また,ウォリスの公式:
√π〜(n!)^22^2n/(2n)!√n
より,結局,
n!〜√(2πn)n^nexp(−n)
にたどりつきます.
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【2】log(n!)の誤差評価
log(n!)
=C+nlogn−n+1/2・logn+∫(n,∞)σ(x)dx/x^2
=nlogn−n+O(logn)
また,n!を素因数分解したとき,ある素数pがp^rの形で含まれていたとすると,ガウス記号[・]を用いて
r=[n/p]+[n/p^2]+・・・+[n/p^s]+・・・
であるが,
log([n!])
=Σ([n/p]+[n/p^2]+・・・+[n/p^s]+・・・)logp
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【3】二項係数の奇偶性
(Q)(a+b)^nの二項展開の係数は,nが2^k−1の形であるとき,そのときに限りすべて奇数となることを証明せよ.
(A)(a+b),(a+b)^2,・・・,(a+b)^n-1に対して成り立っていると仮定して,(a+b)^nに対しても成り立つことを証明する.
両端の1を除くn−1個の二項係数は
n/1=n,n(n−1)/1・2,・・・,n(n−1)・・・1/1・2・・・(n−1)=n
これらがすべて奇数であるための必要十分条件は
[1]両端のnが奇数であること
[2]残りの数の分母、分子から奇数を取り去って作られる数が奇数であることである.
n=2m+1とおけば,これらの数は
m/1=m,m(m−1)/1・2,・・・,m(m−1)・・・1/1・2・・・(m−1)=m
で表される.m<nであるから,このm−1個の数はmが2^k-1−1の形であるとき,そのときに限りすべて奇数となる.
n=2m+1=2(2^k-1−1)+1=2^k−1
より,QED.
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