■n次元正多面体の辺と対角線(その37)

 これは円(球)の性質を高校生が自ら発見するための体験型数学演習である.円(球)に内接する正多角形(正多面体)のもつ美しい性質を教具を用いた実験を通して解き明かしていく.

 取り上げる円(球)の性質「単位球に内接する正多面体のすべての辺と対角線の長さの2乗和は頂点数の2乗に等しい」は基本的なものであるが,実は大学の数学科の先生でも知っている人はいない(たとえいたとしてもごくわずかである).

 今回のコラムでは,(その12)に掲げたルーブリックに,

[定理]正n角形が半径1の円に内接している.ひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積は頂点数に等しい.

  Π(1,n-1)dj=n

[定理]対角線の長さの平方の逆数の和公式

  Σ(1,n-1)1/dj^2=(n^2−1)/12

が成立することを加筆した.

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【1】授業の進め方

[1]30人を5人ずつ位,5〜6班に分け,共同で作業させる.各班に模型を1台ずつ与える.班の数だけ用意するものとして,長めのものさしと電卓(√が計算できるもの).以下に,東海大学芸術工学部の山口康之先生製作の教具の写真を掲げる.

[2]円周上に等間隔に配置されたn点を結んで完全グラフを作る.それは正n角形のすべての辺と対角線になるが,以後,辺も含め対角線と呼ぶことにする.

[3]正3角形,正方形,正5角形,正6角形について,対角線の長さを調べさせる.長さの異なるものは何種類あり,何本ずつあるかなど. 対角線の長さは実測してもピタゴラスの定理を用いてもよいが,実測した場合は規格化するために,実測値を教具の円の半径で割る必要がある.

[4]上記4種から予想される円の性質は? 一般に,正n角形の対角線(辺も含む)は全部で何本あるかなど. 何も回答がなければヒントを出す.例えば「長さを2乗したらどうか」など.偶数角形のほうがやさしいが,奇数角形でも同じ結果が得られる.

[5]”対角線の長さの積は頂点数と同じ”,”対角線の長さの平方の逆数の和は・・・”,“各対角線の2乗の総和”は“頂点数の2乗”が導き出せたら,それをを一般化できないか議論させ,平面で一般の正n角形の場合の証明に挑戦させる.2次元で偶数角形の場合はピタゴラスの定理を用いた証明がほとんどと思われるが,d次元の場合はベクトルを用いるほうがやさしい.積Π(1,n-1)dj=vがうまく整数になるのは2次元の特殊性であるが,三角関数以外に複素数が活用できる.

[6]3次元ではどうなるかを議論させ,その証明に挑戦させる.“各対角線の2乗の総和”=“頂点数の2乗”という性質を満たす正多面体以外の図形は? また,より高次元について類推させる.

[定理]正n角形が半径1の円に内接している.ひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積は頂点数に等しい.

  Π(1,n-1)dj=n

[定理]対角線の長さの平方の逆数の和公式

  Σ(1,n-1)1/dj^2=(n^2−1)/12

が成立する・・・これらの公式は2次元の場合のみで成立するが,対角線の長さの平方の和公式

  Σ(1,n(n-1)/2)dj^2=n^2

は任意の次元で通用する.すなわち,

[定理]単位円に内接する正多角形の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい.単位球に内接する正多面体の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい.n次元単位球に内接する正多胞体の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい.

[7]発表

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