nC1+nC2+nC3+・・・+nCn=2^n−1
nC1+nC2・2+nC3・3+・・・+nCn・n=n2^(n-1)
はよく知られているが
nC1+nC2/2+nC3/3+・・・+nCn/n=?
はどうだろうか?
公式集を調べてみたら,
nC1/2+nC2/3+nC3/4+・・・+nCn/(n+1)=(2^(n+1)−1)/(n+1)−1
があったから,
nC1+nC2/2+nC3/3+・・・+nCn/n>(2^(n+1)−1)/(n+1)−1はわかるが,
nC1+nC2・2+nC3・3+・・・+nCn・n=n2^(n-1)
のような適当な式が見あたらない.
したがって,
SS=n2^(n-3)・Σ(n,k)/k
はこれ以上簡単にすることができないと思うが,非整除性の証明だけでもできないものであろうか? この問題は以下の問題と同値であると思われる.
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調和級数Hn=Σ(1/n)は非常にゆっくりとですが大きくなり,ついには無限大に発散すること,すなわち,
1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n〜logn→∞
は容易に示すことができます.
ここで,n番目の調和数を
Hn=1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n
と定義すると,H1=1,H2=3/2,H3=11/6,・・・,H∞=∞となります.それでは,・・・
(問)n>1ならば,Hn は整数にはならないことを示せ.
たとえば,分母が2のべき乗になっている項のうちで,その指数が最大のものを考えると,それと組になる項がどこにもありません.このことから,Hnは分子が奇数で,分母が偶数の分数になるのですが,このことをきちんとした形で書いてみましょう.
(証)2^k≦nとなる最大の指数をk,Pをn以下のすべての奇数の積とすると,
2^(k-1)PHn
=2^(k-1)P(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n)
は,2^(k-1)P/2^k以外の項はすべて整数となる.
なお,これと類似の問題としては,
a) 1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n
は決して整数にはならない (タイシンガー,1915年)
b) 1/(a+1)+1/(a+2)+・・・+1/(a+n)
は決して整数にはならない (クルシュチャク,1918年)
c) 1/(a+d)+1/(a+2d)+・・・+1/(a+nd)
は決して整数にはならない (エルデシュ,1932年)
などがあげられます.
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さらに,類似の問題としては,ウォルステンホルムの定理
「pが2,3以外の素数ならば有限調和級数(既約分数)
1+1/2+1/3+・・・+1/(p−1)
の分子はp^2で割り切れる.たとえば,p=5のとき,この分数は25/12となり,その分子はp^2で割り切れる.」
同様に
「p>3が素数ならば
S=((p−1)!)^2(1+1/2^2+1/3^2+・・・+1/(p−1)^2)
がpで割り切れる.」
「pが素数でp>5であるときに限り,
1+1/2^3+1/3^3+・・・+1/(p−1)^3
の分子はp^2で割り切れる」
「pが素数でp>7であるときに限り,
1+1/2^4+1/3^4+・・・+1/(p−1)^4
の分子はpで割り切れる」
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1819年,バベッジは
(2p−1,p−1)=1 (mod p^2)
に気づきましたが,1862年,ウォルステンホルムは
(2p−1,p−1)=1 (mod p^3)
を証明したことになります.
1+1/2+1/3+・・・+1/(p−1)
の分子をウォルステンホルム数と呼びますが,ウォルステンホルムの定理は
(2p−1,p)=1 (mod n^3)
が成り立つことを主張するものです.
そこで,もし
(2p−1,p)=1 (mod p^4)
が成り立つとき,pをウォルステンホルム素数と呼ぶことにしましょう.
マッキントッシュはベルヌーイ数Bp-3の分子を割り切る素数はウォルステンホルム素数であることを示しました.ウォルステンホルム素数でいまのところ既知のものは16843と2124679だけです.p=16843,2124679はBp-3の分子を割り切るのです.
ウォルステンホルム素数は無限に存在し,どれも
(2p−1,p)=1 (mod p^5)
を満たさないと予想されています.
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