コラム「分割の幾何学におけるいくつかの定理(その2)」では,テトラドロン(鼈臑型四面体)を三角柱に等積変形した.すなわち,テトラドロンと三角柱のデーン不変量は0で,相互に分解合同である.
テトラドロンやペンタドロンは平行多面体ではないが,平行多面体の元素である.それでは
[Q]テトラドロンやペンタドロンはリバーシブル分解合同だろうか?
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この設問は
[1]平行多面体は空間充填多面体のある種のクラスであるが,空間充填多面体は常にリバーシブル分解合同だろうか?
[2]中心対称かつすべてのファセットが中心対称である多面体は,リバーシブル分解合同か? (そうではない)
[3]そのn次元版「n次元平行多胞体は常にリバーシブル分解合同である」ことはいえるだろうか?
に対する解答のキモになる重要なものと考えられる.
早速,中川宏さんに検討してもらったが,
[A]4ピースのテトラドロン→三角柱は表裏が完全な入れ替えになっていないことはすぐわかります.27個のもの(あるいはn^3個のもの)も蝶番返しにはなりそうもないと思います.
[A]ペンタドロンは6個で塹堵(ぜんと,立方体の1/2の三角柱)になります.その2倍,4倍,8倍,・・・2^n倍も三角柱になりますが,凧型面を表に出すことはできないので,表裏入れ替えはできそうにないですね.また,ペンタドロンを割って別の立体に解体再編する場合,二分して三角柱にすることはできます.ただし,上面は底面と平行ではないので,底面と平行にさらに切ると,鼈臑(上)と塹堵(下)に分かれます.
[A]結局,テトラドロンもペンタドロンも三角柱にすることはできますが,裏返しではありません.
[補]「九章算術」の立方体,塹堵(ぜんと),陽馬,鼈臑はピースを並べ替えて等積変形により立体の体積を求積するもので,同じく中国生まれの「タングラム」の立体版と考えられる.
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