(その17)において,大菱形立方八面体の高次元版を求めたが,今回のコラムでは小菱形立方八面体の高次元版を求めてみたい.
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[1]小菱形立方八面体の計量
もとになる立体の1辺の長さをa,切稜パラメータをx,切頂パラメータをyとおくと,
(1)2p角形面と4角形面に挟まれる辺の長さは
b=a+2xcos(2π/p)−2x−2y
(2)2p角形面と2q角形面に挟まれる辺の長さは
c=2ycos(π/p)
(3)4角形面と2q角形面に挟まれる辺の長さは
d=2xcos(π/p)
で与えられます.
また,正多面体のある頂点から隣接する頂点までの距離のどのくらいを切稜,切頂するのか,その切稜率をs,切頂率をtとおくと
sa=x,ta=2x+y (0≦s≦0.5,0≦t≦1)
ですから
x=sa,y=(t−2s)a
切稜優位型(根本で切頂する場合)では,y=0ですから
b=a+2xcos(2π/p)−2x
d=2xcos(π/p)
準正多面体では,b=dより
1+2scos(2π/p)−2s=2scos(π/p)
s=1/(2−2cos(2π/p)+2cos(π/p))
したがって,小菱形立方八面体ではp=4とおいて
s=1/(2+√2),t=2s
となることがわかります.
ここで,もとの正方形面までの距離を1とするため,x=sa,y=(t−2s)aにおいて,a=2とおくと
x=2/(2+√2)=2−√2,y=0
正三角形面は(1−x,1−x,1)の巡回置換で与えられるから,その中心は(1−2x/3,1−2x/3,1−2x/3),正三角形面までの距離は
√3(1−2x/3)=(2√2−1)/√3
同様に正方形面の中心は(0,1−x/2,1−x/2),正方形面までの距離は
√2(1−x/2)=1
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[2]小菱形立方八面体の高次元版
たとえば,n次元の2^n+2n面体を得るのに3次元正軸体を切頂する場合,x≧y≧z≧0なる点P(x,y,z)においてz=0,4次元の場合はx≧y≧z≧w≧0なる点P(x,y,z,w)においてw=0としてずべての稜線の長さが等しくなる条件を求めた.
また,n次元の置換多面体を得るのに,3次元正軸体を切頂切稜する場合,x≧y≧z≧0なる点P(x,y,z)においてz≠0,4次元の場合はx≧y≧z≧w≧0なる点P(x,y,z,w)においてw≠0としてずべての稜線の長さが等しくなる条件を求めた.すなわち,3次元でx≧y≧z>0,4次元でx≧y≧z≧w>0とすることにによって得られる多面体は2^n+2n面体ではなく,3^n−1面体になる.このわずかな違いが大きな差を生むことになるのである.
ここでは小菱形立方八面体の高次元版を得ることを考える.3次元の場合,x≧y≧z>0なるy=z平面上の点P(x,y,z)が与えられたとき,ずべての稜線の長さが等しくなるのは,点P(x,y,z)からx=y平面,z=0平面までの距離を等しくとると
(x−y)/√2=z
→ y=z
x=y+√2z
これらは,x+y+z=1上の点であるから代入すると,
3z+√2z=1 → z=1/(3+√2)
また,点P(x,y,z)のz=0平面に対する鏡映は(x,y,−z)であるから,辺の長さは2z.
4次元の場合は,z=w平面上の点P(x,y,z,w)からx=y平面,y=z平面,w=0平面までの距離を等しくとると
(x−y)/√2=(y−z)/√2=w
→ z=w
y=z+√2w=w+√2w
x=y+√2w=w+2√2w
これらは,x+y+z+w=1上の点であるから代入すると,
4w+3√2w=1 → w=1/(4+3√2)
また,点P(x,y,z,w)のw=0平面に対する鏡映は(x,y,z,−w)であるから,辺の長さは2w.
一般には,S=(n−1)(n−2)/2として
→ nω+S√2ω=1,ω=1/(n+S√2)
x=(1+(n−2)√2)ω,y=(1+(n−3)√2)ω,z=(1+(n−4)√2)ω,・・・,w=ω,辺の長さは2ω.
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[3]中心から各面までの距離
切頂切稜面と中心座標
Pn(0,・・・,0)
の距離を求める.
P0(1,0,0,・・・,0)=PnP0
P1(1/2,1/2,0,・・・,0)=PnP1
P2(1/3,1/3,1/3,・・・,0)=PnP2
Pn-1(1/n,1/n,1/n,・・・,1/n)=PnPn-1
とおくと,切頂切稜面はPkPnに垂直で,点
Q=(x,y,z,・・・)=((1+(n−2)√2)ω,(1+(n−3)√2)ω,・・・,ω)
を通る.
ファセットを定めている不等式は,
a・x=c
で与えられる.一般に,超平面a・x=cと点x0の距離は
|a・x0−c|/‖a‖
とくに,原点からファセットまでの距離は|c|/‖a‖となる.
PnP0に垂直なn次元超平面が点Qを通るから,
a0=P0
q=Q
とすると,この超平面をa・(x−q)=0,a・x=a・q=cで表すと
c0=x,h0=|c0|/‖a0‖=x
PnP1に垂直なn次元超平面では
a1=P1
c1=(x+y)/2,h1=|c1|/‖a1‖=(x+y)/√2
PnPn-1に垂直なn次元超平面では
an-1=Pn-1
cn-1=(x+y+z+・・・)/n,hn-1=|cn-1|/‖an-1‖=(x+y+z+・・・)/√n
これらは
[a]頂点面までの距離
切頂されていなければ頂点は(1,0,・・・,0)であるが,切頂されているので,中心は(x,0,・・・,0).
[b]辺心面までの距離
切稜されていなければ辺心は(1/2,1/2,0,・・・,0)であるが,切稜されているので,中心は
((x+y)/2,(x+y)/2,0,・・・,0).
[c]胞心面までの距離
胞心は(1/n,1/n,・・・,1/n)→1/√n
と一致する.
一般に,
‖ak‖^2=Σ(1/(k+1))^2=1/(k+1)
hk=Σ(1+(n−1−i)√2)ω/√(k+1)=√(k+1)ω(1+(2n−k−4)/√2)
Hk=hk/2ω=√(k+1)(1+(2n−k−4)/√2)/2
ここで,
Hk=hk/2ω=√(k+1)(1+(2n−k−4)/√2)/2
n=3,k=0のとき,H0=(1+2/√2)/2
n=3,k=1のとき,H1=√2・(1+1/√2)/2
H1/H0=√2・(1+√2)/(2+√2)=1
また,n=3のとき,
(1/√n)/x=(2√2−1)/√3
となって,小菱形立方八面体の計量と一致する.
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