【1】3次元の場合の証明
多面体Pに対し二面角をδiとすると,デーン不変量δ(P)はすべての辺で二面角の和をとり,mod πで還元したものとして定義される.
δ(P)=Σnδ (mod π)
3次元正多面体の場合,δ4+δ8=π,δ6=π/2であるから
N1δ4+N2δ12+N3δ20≠0 (mod π)
とより簡潔に書くことができる.これは,デーンの定理(1901年)
N1δ4≠0 (mod π)
の一般化に他ならない.
これか証明されたことから,3次元正多面体の元素数は≧4であるという結論が主張できた.4次元以上の場合もこの方法で証明できれは強い意味で証明できたことになり,かっこいいのであるが,いささか牛刀割鶏の感あり.
すなわち,正多面体をどのように分解し接合しても元素数はこれ以上減らせないという最小元素数を求めるのに,細分化する元素数に上限を設けない分解合同は無用の長物と考えられるのである.
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【2】上限付き幾何学
ところで,空間充填の必要条件は,一辺の回りの二面角の和が360°となることである.
Σnδ=2π
これはデーン不変量
Σnδ=0 (mod π)
を弱めたものであることがわかるだろう.
しかしながら「自明な上限」を考慮すると,各正多面体は高々ベース部分とルーフ部分に分解されるだけであって,分解合同の必要条件としてはこれで十分なのである.正多面体の元素定理が「空間充填」と「分解合同」の中間に位置していることが理解されるだろう.
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【3】3次元の場合の証明・再考
3次元の場合も「上限付き」という意味では,4次元以上と変わりはない.そこで,上限付き幾何学の観点から,正多面体の元素定理をみてみることにしよう.3次元の一種類の合同な正多面体による空間充填では立方体だけが空間充填形なのであるが,もし2種類以上を使ってよければ,正四面体と正八面体の二面角が互いに補角であるから,両者を組み合わせて空間充填が可能になる.正多面体同士の組合せでは,正四面体と正八面体を組み合わせたものだけが空間を充填するのである.
すなわち
lδ4+mδ6+nδ8+oδ12+pδ20=2π
を満たす整数(l,m,n,o,p)は,
(0,4,0,0,0)
(2,0,2,0,0)
で,これらは実際に空間充填するから,
[1]単一種による空間充填の例
[2]複数の種類による空間充填例
[3]非空間充填例
と分類すると,3次元では
[1]立方体(クラスB)
[2]正四面体+正八面体(クラスA)
[3]正12面体(クラスC),正20面体(クラスD)
の4群に分類される.
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【4】4次元以上での上限付き幾何学
4次元では
[1]8胞体,16胞体,24胞体(これらはどれもRPから構成できる,クラスB)
[2]なし
[3]5胞体(クラスA),120胞体(クラスC),600胞体(クラスD)
の4群,5次元では
[1]10房体(5次元立方体,クラスB)
[2]なし
[3]6房体(5次元正四面体,クラスA),32房体(5次元正八面体,クラスC)
の3群となる.
超立方体は各次元で空間充填形[1]である.[2]の空間充填形として2種の胞間の角の和が360°になるのは,n≧5のとき,8次元の
[1]8次元立方体
[2]8次元正四面体+8次元正八面体
[3]なし
の場合だけであることがわかっているが,[2]は超立方体に再編されない.実際,
17280×正単体+2160×正軸体→超立方体ではない亜正多面体
である.よって,n(≧5)次元正多面体の元素数は3であることが確定する.
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【5】まとめ
4次元以上の元素定理の証明に齟齬があるのではない.これが正しいのであって,逆に,3次元の場合のデーン不変量を用いた証明が牛刀割鶏であったというわけである.3次元と4次元は元素数が減少する特殊な次元といえるだろう.
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