カンタベリー・パズルは「平面ハトメ返し」による分割合同なのですが,立体の2つの断片のどれかの辺を蝶番でつなぐことによって「立体蝶番返し」を考えることができます.菱形十二面体や切頂八面体はよく知られた空間充填立体ですが,実際,菱形十二面体と直方体の間の立体蝶番返し,切頂八面体と直方体の間の立体蝶番返しなど空間充填形同士の蝶番返しが作られています.
このような例として秋山仁先生は,菱形十二面体と直方体の間の立体ハトメ返し「キツネヘビ」,切頂八面体と直方体の間の立体ハトメ返し「ブタハム」など空間充填形同士のハトメ返しを作られ,講演ではそのような小道具を使って菱形十二面体,切頂八面体の体積を求めておられます.また,このとき多面体の形が変形するばかりでなく,菱形十二面体,切頂八面体の表面が直方体の内部に隠れることを利用して,黄色(キタキツネ)を緑(ヘビ)に変色させ,キタキツネが一瞬にしてヘビに飲み込まれる様子を表現しています.
しかしながら,切頂八面体から菱形十二面体への直接的な等積変形は至難の業に思えます.→カンタベリー・パズルの木工製作(その21)〜(その23)参照.なぜならば,秋山仁先生の「キツネヘビ」「ブタハム」は「分解合同」よりも格段難しい「リバーシブル分解合同問題」であるからです.発想の転換が必要になります.
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【1】発想の転換
切頂八面体から菱形十二面体への直接的な等積変形は不可能にしても,切頂八面体から2種類の菱形からなる菱形十二面体への「リバーシブル分解合同」は可能なのではなかろうかと秋山先生は考えたに違いありません.そして実際に可能であったらしいのですが,どこか氏の「執念」を感じさせる着想です.
その2種類の菱形からなる12面体を菱形12面体(第3種)と呼ぶことにしますが,詳細不明につき,自分で考えてみることにしました.
3次元では切頂八面体の体積はそれに外接する立方体の半分であることはよく知られています.一方,3次元では菱形十二面体(準正多面体の双対多面体)の体積はそれに内接する立方体の2倍であることもよく知られています.菱形十二面体は3次元立方体の8頂点と正八面体の6頂点を結んでできる多面体ですが,それを伸縮させて切頂八面体と等積にするだけでも無数に解が存在します.
まず最初に浮かんだ発想は,菱形十二面体の赤道に並ぶ菱形4面を1/√2倍に縮めて正方形とし,極方向の長さを√2倍に伸ばすというものです.しかしながら,ここから先がにっちもさっちもいかず,思考停止しました,次回の宿題としたいと思います.
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