■方程式と最小拡大数体(その4)

 (その2)に掲げた生成多項式は不変式論の観点からみてもおもしろい結果とは思うが,どうやら私には勘違いがあるようである.

 方程式

  f(x)=x^3−(s−3)x^2−sx−1=0

に対して,

  f(−1/(x+1))=(−1/(x+1))^3f(x)

が成り立つ.

 したがって,f(α)=0であれば,f(−1/(α+1))=0.さらにx=−1/(α+1)を−1/(x+1)に代入すれば,f(−(α+1)/α)=0.さらにx=−(α+1)/αを−1/(x+1)に代入すれば,f(α)=0に戻るので,Q(α)は巡回3次体と呼ばれる.

 この方程式の実根をαで表すとき,数体

  Q(α)={a+bα+cα^2|a,bは有理数}

は他の二つの根を含んでいる.すなわち,他の2根は

  β=−1/(α+1),γ=−(α+1)/α

で与えられ,最小分解体は

  Q(α)=Q(β)=Q(γ)

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 巡回群Cnはよいとして,二面体群Dnがわからない.

D3(=S3):x^3−sx−s=0

 3次方程式の根の公式より,根を

  α=(−c/2+((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)^1/3+(−c/2−((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)^1/3

で表す.x^3−sx−s=0の場合,

  α=(s/2+((s/2)^2+(−s/3)^3)^1/2)^1/3+(s/2−((s/2)^2+(−s/3)^3)^1/2)^1/3

 判別式は

  D(f)=6^2((s/2)^2+(−s/3)^3)=(4s^3−27s)=s^2(4s−27)

判別式D(f)=0はこの3次方程式が重根をもつための必要十分条件である.

また,D(f)>0のとき,f(x)=0は相異なる3実根をもつ.

 この3次体が巡回3次体であるための必要十分条件はs^2(4s−27),したがって(4s−27)がQのなかで平方数になっていることである.すなわち,因数(4s−27)がQ内で平方(例えばs=7,31/4,9,43/4,13,・・・)であれば,3次体は巡回3次体である.s=0,27/4の場合,判別式が0になって重根をもつ.

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 正n角形の表と裏を区別することから二面体群と呼ばれるが,その位数は2nである.したがって,D3の位数は6である.

 群でなく体の話をするが,体Kでは四則演算が与えられており,加法と乗法はともに結合法則と交換法則を満たし,両者は分配法則で結ばれている.また,加法と乗法はそれぞれ零元と単位元と逆元(加法については−a,乗法についてはa^-1)をもつ.

 二面体群D3とは位数6の集合{α,β,γ,−α,−β,−γ}あるいは(その3)に掲げた

  {α,β,γ,α^-1,β^-1,γ^-1}={λ,1−λ,1/(1−λ),1/λ,λ/(λ−1),(λ−1)/λ}

のことかと思いきや,3次方程式であるから根は3つしか存在しないはずである.さりとて,3根α,β,γの置換6個のすべて(=S3)としてもおかしいことになる.

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 当面の空間充填2^n+2n面体の面数公式の問題に関しても,八方ふさがり状態である.現在わかっているのは

 2次元:(f0,f1)=(4,4)

 3次元:(f0,f1,f2)=(24,36,14)=切頂八面体

 4次元:(f0,f1,f2,f3)=(24,96,96,24)=正24細胞体

の3つだけであるが,f1=n/2・f0が成り立たないから単純多面体ではないし,fn-2=n/2・fn-1が成り立たないから単体的多面体でもない.また,置換多面体にみられた逐次構造も有していない.当分の間,難渋は続きそうである.

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