n次元正軸体には外接球と内接球以外にも各種中接球があります.
頂点を通るもの(外接球):r=1
辺の中点を通るもの:r=1/√2
面の中心を通るもの:r=1/√3
3次元面面の中心を通るもの:r=1/√4
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n−1次元面の中心を通るもの(内接球):r=1/√n
たとえば,内接球の場合の結果が
n!/n^n≒2(π/8)^n〜√(2n/π)(π/8)^n
であったのですが,それでは
[Q]スターリングの公式をもっともよく近似する球はどれか?
という問題を考えてみます.
(その17)で与えた解はおおざっぱですが,これを精密化すれば完全な証明になりそうです.
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[A]正軸体の中接球の体積
π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n
とn次元切頂八面体の体積
1/2・(2/n)^n・2^n
の大小比較を行うが,ここでは偶数次元の場合(n=2k)だけを扱うことにする.
1/2・(2/n)^n・2^n=1/2・{1/k}^2k・2^2k
π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n=π^k/k!・r^2k
したがって,
r^2k≒k!/2・(2/k√π)^2k
r^2≒(k!/2)^1/k・4/πk^2=((n/2)!/2)^2/n・16/πn^2
となるような中接球がbest fitすることになる.
そこで,best fitする中接球(r^2=1/(n−j))を考えると,n→∞のとき,j/nあるいは(n−j)/n=1−j/nの収束を調べるという問題になる.
n→∞になるにつれて
((n/2)!/2)^-2/nπn^2/16=n−j
((n/2)!/2)^-2/nπn/16=(n−j)/n=(1−j/n)
((n/2)!/2)^-2(πn/16)^n=(1−j/n)^n
n→∞のとき,右辺→exp(−j)であるから,
−j→−2log((n/2)!/2)+nlog(πn/16)
とするのはよいとしても,スターリングの公式を使って
(n/2)!→√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)
とするのは正しくない.相対誤差は0に近づくが絶対誤差は無限大に発散するからである.
そこで,
4(πn/16)^n=(1−j/n)^n{(n/2)!}^2
の両辺を
{√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)}^2=πn(n/2)^nexp(−n)
で割ってから,極限をとってみよう.すると
左辺=4/πn・(πe/8)^n
右辺=exp(−j)
−j→nlog(πe/8)+log(4/πn)
−j/n→log(πe/8)=1+log(π/8)=0.0652875
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[結論]
n→∞のとき,
r^2=1/(n−j)→1/(1.0652875n)
なる球がスターリングの公式の最良近似球になる.内接球(r^2=1/n,j=0)は最適もののではないにせよ,かなりいい線をいっている近似球体である.
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