■スターリングの公式の図形的証明?(その18)

 n次元正軸体には外接球と内接球以外にも各種中接球があります.

  頂点を通るもの(外接球):r=1

  辺の中点を通るもの:r=1/√2

  面の中心を通るもの:r=1/√3

  3次元面面の中心を通るもの:r=1/√4

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  n−1次元面の中心を通るもの(内接球):r=1/√n

 たとえば,内接球の場合の結果が

  n!/n^n≒2(π/8)^n〜√(2n/π)(π/8)^n

であったのですが,それでは

[Q]スターリングの公式をもっともよく近似する球はどれか?

という問題を考えてみます.

 (その17)で与えた解はおおざっぱですが,これを精密化すれば完全な証明になりそうです.

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[A]正軸体の中接球の体積

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n

とn次元切頂八面体の体積

  1/2・(2/n)^n・2^n

の大小比較を行うが,ここでは偶数次元の場合(n=2k)だけを扱うことにする.

  1/2・(2/n)^n・2^n=1/2・{1/k}^2k・2^2k

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・r^n=π^k/k!・r^2k

したがって,

  r^2k≒k!/2・(2/k√π)^2k

  r^2≒(k!/2)^1/k・4/πk^2=((n/2)!/2)^2/n・16/πn^2

となるような中接球がbest fitすることになる.

 そこで,best fitする中接球(r^2=1/(n−j))を考えると,n→∞のとき,j/nあるいは(n−j)/n=1−j/nの収束を調べるという問題になる.

 n→∞になるにつれて

  ((n/2)!/2)^-2/nπn^2/16=n−j

  ((n/2)!/2)^-2/nπn/16=(n−j)/n=(1−j/n)

  ((n/2)!/2)^-2(πn/16)^n=(1−j/n)^n

 n→∞のとき,右辺→exp(−j)であるから,

  −j→−2log((n/2)!/2)+nlog(πn/16)

とするのはよいとしても,スターリングの公式を使って

  (n/2)!→√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)

とするのは正しくない.相対誤差は0に近づくが絶対誤差は無限大に発散するからである.

 そこで,

  4(πn/16)^n=(1−j/n)^n{(n/2)!}^2

の両辺を

  {√(πn)(n/2)^n/2exp(−n/2)}^2=πn(n/2)^nexp(−n)

で割ってから,極限をとってみよう.すると

  左辺=4/πn・(πe/8)^n

  右辺=exp(−j)

  −j→nlog(πe/8)+log(4/πn)

  −j/n→log(πe/8)=1+log(π/8)=0.0652875

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[結論]

 n→∞のとき,

  r^2=1/(n−j)→1/(1.0652875n)

なる球がスターリングの公式の最良近似球になる.内接球(r^2=1/n,j=0)は最適もののではないにせよ,かなりいい線をいっている近似球体である.

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