■n次元の立方体と直角三角錐(その90)

 空間充填2^n+2n面体は

[1]n次元立方体を超平面:x1+・・・+xn=n/2で切頂する

あるいは

[2]n次元正軸体を超平面:x1=2/nで切頂する

ことによって得られます.

 今回のコラムでは,空間充填2^n+2n面体の面数の不一致を解消するために,超立方体と正軸体の「積多胞体」を導入してみます.

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[1]n=2のとき

 正方形の辺の中点を結ぶ正方形(2次元正軸体)となる.

[2]n=3のとき{3,4}(1,1,0)

 3次元立方体の辺の中点と面の中心の間を通る場合(あるいはその双対として正八面体の面の中心と辺の中心の間を通る場合),正方形面内に正方形(2次元正軸体)型に頂点ができる.

 また,立方体の辺の位置(正八面体の辺の位置)に12個の辺ができ,正八面体の2次元面の位置に正八面体の2次元面の位置に正方形面を結ぶように正六角形面ができる(切頂八面体).すなわち,積多面体においては,正八面体の辺と面,立方体の面が保存されることになる.

  f0=(2次元正軸体の頂点数)×(3次元立方体の面数)=4×6=24

  f1=(2次元正軸体の辺数)×(3次元立方体の面数)+(3次元正軸体の辺数)=4×6+12=36

  f2=(2次元正軸体の面数)×(3次元立方体の面数)+(3次元正軸体の面数)=1×6+8=14

[3]n=4のとき{3,3,4}(0,1,0,0)

 4次元の超立方体の2次元面の面24個の中心を通る場合(あるいはその双対として正16胞体の24本の辺の中点を通る場合),立方体の各面の中心に24個の頂点ができる.

 立方体の内部には正八面体(3次元正軸体),また,正16胞体の3次元面の位置には正八面体(中点切頂四面体)ができる.すなわち,積多面体においては,正16胞体の面と3次元面,4次元立方体の3次元面が保存されることになる.

  f0=(4次元立方体の面数)=24

  f1=(3次元正軸体の辺数)×(4次元立方体の3次元面数)=12×8=96

  f2=(3次元正軸体の面数)×(4次元立方体の3次元面数)+(4次元正軸体の面数)=8×8+32=96

  f3=(3次元正軸体の3次元面数)×(4次元立方体の3次元面数)+(4次元正軸体の3次元面数)=1×8+16=24

[4]n=5のとき(5次元42胞体){3,3,3,4}(0,1,1,0,0)

 5次元の超立方体の2次元面と3次元面の面の間を通る場合(あるいはその双対として5次元正軸体の辺の中点と2次元面の中心の間を通る場合),立方体の内部に正八面体型に頂点ができる.

 そして,5次元正32胞体の4次元面の位置に4次元切頂単体があるのだが,積多面体においては,正軸体の面と3次元面と4次元面,4次元立方体の3次元面,4次元面が保存されることになる.

  f0=(3次元正軸体の頂点数)×(5次元立方体の3次元面数)=6×40=240

  f1=(3次元正軸体の辺数)×(5次元立方体の3次元面数)=12×40=480

  f2=(3次元正軸体の面数)×(5次元立方体の3次元面数)+(5次元正軸体の面数)=8×40+80=400

  f3=(3次元正軸体の3次元面数)×(5次元立方体の3次元面数)+(5次元正軸体の3次元面数)=1×40+80=120

  f4=(5次元立方体の4次元面数)+(5次元正軸体の4次元面数)=10+32=42

[5]n=6のとき(6次元76胞体){3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)

 6次元の超立方体の3次元面の面160個の中心を通る場合,3次元立方体の中心を頂点とする正16胞体が4次元立方体の内部にできる.

 そして,5次元正32胞体の5次元面の位置に5次元切頂単体があるのだが,積多面体においては,正軸体の3次元面と4次元面と5次元面,4次元立方体の4次元面,5次元面が保存されることになる.

  f0=(6次元立方体の3次元面数)=160

  f1=(4次元正軸体の辺数)×(6次元立方体の4次元面数)=24×60=1440

  f2=(4次元正軸体の面数)×(6次元立方体の4次元面数)=32×60=1920

  f3=(4次元正軸体の3次元面数)×(6次元立方体の4次元面数)+(6次元正軸体の3次元面数)=16×60+240=1200

  f4=(4次元正軸体の4次元面数)×(6次元立方体の4次元面数)+(6次元正軸体の4次元面数)=1×60+192=252

  f5=(6次元立方体の5次元面数)+(6次元正軸体の5次元面数)=12+64=76

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【雑感】

 またしても素朴な初期モデルに戻ってしまった.このモデルを導入した理由は

[1]2・3・4次元では成功したモデルであること

[2]たとえば6次元では超立方体の3次元面の面160個の中心を通るので,頂点数はわかるが,与えられた点に対して勝手に線を引いても空間充填2^n+2n面体は作れないこと

[3]人間の直観や勘は高々3次元までの世界ではよく働くが,高次元の世界では直観は働きにくく(あまり働かないのが通常),しかも次元が大きくなるに従い,面の配位は非常に複雑になり,わかわれが3次元空間でイメージするものとは大きく異なってくること

など,いずれにせよ,その形を構成するにはかなりの洞察力がいるからである.

 初期モデルはエレガントさを保っているのだが,これまでは失敗が続きである.初期モデルで説明しようとするところに本質的な無理があるのだろうか?

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