今回のコラムでは(その84)で行った切頂面にできる図形『n次元正軸体の切頂面の中心はx=2/nとして(x,0,・・・,0)である.切頂点が浅い場合,頂点は1次元面上の点(x,1−x,0,・・・,0)で与えられる.n>4のとき,x<1−xとなるので,
[1]4≦n≦6→頂点は2次元面上の点(x,x,1−2x,0,・・・0)
[2]6≦n≦8→頂点は3次元面上の点(x,x,x,1−3x,0,・・・0)
[3]8≦n≦10→頂点は4次元面上の点(x,x,x,x,1−4x,0,・・・0)
となる.』について,再検討してみます.
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【1】シュレーフリ記号
各面がp角形,各頂点が正q角錐である正多面体を(p,q)で表します.(p,q)をシュレーフリ記号と呼びます.シュレーフリはこれを一般化して,n次元正多面体を
(p1,p2,・・・,pn-1)
で表しました.これは(n−1)次元正多面体(p1,p2,・・・,pn-2)が(n−3)次元面上にpn-1個ずつ会するようなn次元正多面体という意味です.たとえば(p,q)はp角形が頂点の周りにq個ずつ集まってできる3次元正多面体,(p,q,r)は3次元正多面体(p,q)が辺の周りにr個ずつ集まってできる4次元正多面体ということになります.
一方,頂点での形は(p2,・・・,pn-1)に対応していると考えることもできます.ここでの問題はP0(1,0,・・・,0)の周りにk次元面が何個集まるかということですが,シュレーフリ記号からは何もわかりません.
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【2】正軸体の切頂面の頂点数
n次元標準正軸体は
Σ|xk|≦1
で表現されますが,切頂面はこれと超立方体
|xk|≦2/n
との交わる面となります.
したがって,
[1]2≦n≦4→頂点は1次元面上の点(x,1−x,0,・・・0)
[2]4≦n≦6→頂点は2次元面上の点(x,x,1−2x,0,・・・0)
[3]6≦n≦8→頂点は3次元面上の点(x,x,x,1−3x,0,・・・0)
[4]8≦n≦10→頂点は4次元面上の点(x,x,x,x,1−4x,0,・・・0)
の言明ははなはだ不完全です.P0(1,0,・・・,0)の周りにk次元面が何個集まるかについて,
[1]2(n−1)!/(n−2)!=2(n−1)
[2]2^2(n−1)!/(n−3)!=4(n−1)(n−2)
[3]2^3(n−1)!/2!(n−4)!=4(n−1)(n−2)(n−3)
[4]2^4(n−1)!/3!(n−5)!=8(n−1)(n−2)(n−3)(n−4)/3
という誤解を与えてしまうからです.
切頂面となる(n−1)次元面の頂点数は
[1]n=3のとき,
(x,1−x,0,・・・0)→2(n−1)=4 (正方形)
[2]n=4のとき,
(x,x,0,・・・0)→2(n−1)=6 (正八面体)
[3]n=5のとき,
(x,x,1−2x,0,・・・0)→4(n−1)(n−2)=48
[4]n=6のとき,
(x,x,x,0,・・・,0)→4(n−1)(n−2)/2=40
[5]n=7のとき,
(x,x,x,1−3x,0,・・・0)→8(n−1)(n−2)(n−3)/2=480
[6]n=8のとき,
(x,x,x,x,0,・・・0)→8(n−1)(n−2)(n−3)/6=280
となって,n=3,4の場合を除き,(n−1)次元正軸体にはならないことが確認される.
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【3】切頂正軸体の切頂面の3次元面
空間充填2^n+2n面体では切頂面を別に考える必要はなく,(n−1)次元面と同じ扱いが可能であることがわかった.置換多面体と同様の逐次構造を考えたこと自体が間違いだったというわけである.
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