[1]空間充填2^n+2n面体では,n次元正軸体の頂点の位置にn−1次元正軸体,面の位置にn−1次元切頂正単体がある.
[2]空間充填2^n+2n面体に対応する切頂正単体は
{3,4}(1,1,0)←→{3}(1,1)
{3,3,4}(0,1,0,0)←→{3,3}(0,1,0)
{3,3,3,4}(0,1,1,0,0)←→{3,3,3}(0,1,1,0)
{3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)←→{3,3,3,3}(0,0,1,0,0)
切頂正単体は,それぞれ
[1]{3}(1,1) (2次元正単体の頂点と辺の中点の間を通る場合)
[2]{3,3}(0,1,0) (3次元正単体の辺の中点を通る場合)
[3]{3,3,3}(0,1,1,0) (4次元正単体の辺の中点と面の中心の間を通る場合)
[4]{3,3,3,3}(0,0,1,0,0) (5次元正単体の面の中心を通る場合)
であって,[1]が正六角形,[2]は正八面体であることがわかっています.
3次元空間の場合,頂点との中点の間で切頂するか(浅切頂),辺の中点を通って切頂するか(中点切頂),中点を越えた位置で切頂するか(深切頂),3段階の多面体があります.正単体は自己双対図形なので本質的には2段階の変化となります.
4次元空間では5段階の多胞体があり,正単体の場合は3段階の変化,一般のn次元空間では(2n−3)段階の多胞体があり,正単体の場合は(n−1)段階に変化します.
今回のコラムでは[3][4]について調べてみますが,正単体は自己双対ですから,正軸体・超立方体よりも簡単な対象と思われます.
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【1】n次元正軸体の切頂
空間充填2^n+2n面体は
[1]n次元立方体を超平面:x1+・・・+xn=n/2で切頂する
あるいは
[2]n次元正軸体を超平面:x1=2/nで切頂する
ことによって得られる.ここでは後者の場合を考えよう.
n次元正軸体(cross polytope)を切頂して,すべての辺が同じ長さの「n次元切頂八面体」を作ることを考える.この多胞体は胞数2^n+2nの空間充填図形となる.正軸体を切頂する場合,すべての辺が同じ長さになるのはどんなときだろうか?
n次元正軸体の頂点の座標は,標準単体の座標
(1,0,・・・,0)
(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
(0,0,・・・,1)
の±の組み合わせで与えられるから,基本単体の座標はk次元面の重心をとることによって,
P0(1,0,・・・,0)
P1(1/2,1/2,0,・・・,0)
P2(1/3,1/3,1/3,0,・・・,0)
・・・・・・・・・・・・・・・・
Pn-1(1/n,1/n,1/n,・・・,1/n)
Pn(0,0,・・・,0)
[1]3次元の場合,x≧y≧z≧0なる点P(x,y,z)が与えられたとき,すべての稜線の長さが等しくなるのは,z=0として,点P(x,y,0)からx=y平面,y=z平面までの距離を等しくとると
(x−y)/√2=(y−z)/√2
→ x=2y,y=y,z=0 (切頂八面体)
点P(x,y,0)のx=y平面に対する鏡映は(y,x,0)であるから,辺の長さは
√2(x−y)=√2y
これらは,x+y+z=1上の点であるから代入すると,3y=1
→ x=2/3,y=1/3,z=0
[2]4次元の場合は,w=0として,点P(x,y,z,0)からx=y平面,y=z平面,z=w平面までの距離を等しくとると
(x−y)/√2=(y−z)/√2=(z−w)/√2
→ x=3z,y=2z,z=z,w=0
点P(x,y,z,0)のx=y平面に対する鏡映は(y,x,z,0)であるから,辺の長さは
√2(x−y)=√2z
これらは,x+y+z+w=1上の点であるから代入すると,6z=1
→ x=1/2,y=1/3,z=1/6,w=0
[3]一般には,S=n(n−1)/2として
→ x=(n−1)/S,y=(n−2)/S,z=(n−3)/s,・・・,w=0
となることが理解される.
正軸体の頂点をトランケートして,辺の長さが等しくなるように調整するには頂点ベクトルP0Pnに垂直なn次元超平面を
x=(n−1)/S=2/n
で切頂すればよい(n=3のときはx=2/3).この超平面はnが偶数のとき,点Pn/2-1を通る.2/n>1/nより,点Pn-1は常に保存される.
また,n次元正軸体の切頂面の中心はx=2/nとして(x,0,・・・,0)である.切頂点が浅い場合,頂点は1次元面上の点(x,1−x,0,・・・,0)で与えられる.n>4のとき,x<1−xとなるので,
[1]4≦n≦6→頂点は2次元面上の点(x,x,1−2x,0,・・・0)
[2]6≦n≦8→頂点は3次元面上の点(x,x,x,1−3x,0,・・・0)
[3]8≦n≦10→頂点は4次元面上の点(x,x,x,x,1−4x,0,・・・0)
となる.
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【2】n=5のとき
n次元正軸体の(n−1)次元胞は正単体であり,第1象限における4次元正単体は超平面x+y+z+w+v=1で表される.その境界が3次元正単体である(たとえば,v=0とおくとx+y+z+w=1),また,2次元正単体ではx+y+z=1で表される.
1/3<2/5<1/2
であるから,切断超平面x=2/5は辺の中点P1と面の中心P2の間を通り,2次元正単体の中心P2は保持される.P3も保持されるが,同時に2次元正単体x+y+z=1上の線分y+z=3/5も保持されるため,2次元面は六角形面をもつことになる.したがって,3次元面は切頂四面体となる.
また,切頂面にできる3次元面は正八面体であるから,42胞体は正八面体と切頂四面体で囲まれる図形となる.
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【3】n=6のとき
切断超平面x=2/6=1/3は2次元面の中心P2を通るので,2次元面は六角形面をもたず,点に退化する.3次元正単体には2次元面が4つあるので,3次元面は正四面体となることがわかる.
また,切頂面にできる3次元面は正八面体であるから,したがって,76胞体は正八面体と正四面体で囲まれる図形となる.
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【4】n=7のとき
切断超平面x=2/7は2次元面の中心P2と3次元面の中心の間を通るので,4次元面は切頂四面体と正四面体に分割されることになる.また,4次元正単体には3次元面が5つあるので,切頂面にできる4次元面は正5胞体である.
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