■n次元正多面体の辺と対角線(その28)

 先便で,正120胞体の一頂点からの距離の積が整数になりそうだと申し上げたのは私の早合点でした.   (一松信)

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[1]正120胞体

 2乗の和が2になる数の対の積多数ですから,正24胞体や正600胞体のように,辺の長さが外接球の半径以上(ないし余り小さくない)場合はよいとして,正120胞体のように近接点の多い図形では無理でした.また,Coxeterの本にある標準座標では,外接球の半径が√8であり,計算した値を√8の累乗で割るところを誤ってしまいました.

 何回も誤って計算し直したので,まだ完全とはいえません.しかし,奇妙(?)なことに,(2,20,0,0)を代表点にとってそこからの距離の積(2乗の積)を計算すると,頂点の族のグループごとに分母が2の累乗の有理数になりました.したがって,全体の積も分母が2の累乗の有理数であり,もしも球の半径を√2にすれば整数になります.

 途中の経過を全部お知らせ申さなければなりませんが,一応の計算で

  長さの積=(3^16・5^20・7^3・11^12・19^4・29^5・41^3/2^98)^2

になりました.辺長は2乗で計算しますが,個々のグループでの積は同じ距離の点は4の倍数個ずつ現れるため4乗数になるので,長さの積を計算して後から2乗した次第です.

 2,3,5以外に7,11,19,29,41といった素数が現れるのが不審でしたが,7は別として(7は距離の2乗が4/8,12/8,20/8,28/8という点の組から現れる),他は√5に関連する

  m(m+1)−1   (m=2,3,5,6)

という形の数であることがわかりました.

 ともかくa+√5bとa−√5bとがうまく対になって現れるのが奇妙でした.私の計算が本当に正しいか自信がありません.しかし,無理数が無理数がうまく打ち消すのがまことに奇妙であり,やはり正多胞体の対称性がきいていると思います.長さの積にどのような意味があるのかはともかく,一応お知らせまで.

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