■n次元の立方体と直角三角錐(その82)

 (その80)(その81)にはいくつか考察の誤りもあるが,最終的には

[1]空間充填2^n+2n面体では,n次元正軸体の頂点の位置にn−1次元正軸体,面の位置にn−1次元切頂正単体がある.

[2]空間充填2^n+2n面体に対応する切頂正単体は

  {3,4}(1,1,0)←→{3}(1,1)

  {3,3,4}(0,1,0,0)←→{3,3}(0,1,0)

  {3,3,3,4}(0,1,1,0,0)←→{3,3,3}(0,1,1,0)

  {3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)←→{3,3,3,3}(0,0,1,0,0)

 正軸体の面数公式は既知(Nk^(n)=2^(k+1)nCk+1)であるからいいとして,もし当該の切頂正単体の面数公式(Zk^(n))がわかれば,空間充填2^n+2n面体の面数公式を求めることは可能だろうか? 今回のコラムでは正確な値ではなく,k次元面の最大数はいくつだろうかという上限を予想することから始めたい.いわば上限付き幾何である.

===================================

【1】置換多面体の逐次構造との比較

 切頂八面体(3次元置換多面体)を考えると,正四面体の4頂点と4面に正六角形(2次元置換多面体),6辺に正方形が配置されている.4次元置換多面体では,正5胞体の5頂点と5胞に切頂八面体(3次元置換多面体),10辺と10面に六角柱が配置されている.すなわち,3次元置換多面体である切頂八面体は8枚の六角形と6枚の正方形からなるが,4枚の六角形+6枚の正方形+4枚の六角形と考えることができる.同様に,4次元置換多面体は10個の切頂八面体と20個の六角柱からなるが,5個の切頂八面体+10個の六角柱+10個の六角柱+5個の切頂八面体と考えることができる.

 一般に,n次元置換多面体には2(n+1)個のn−1次元置換多面体が配置されているのであるが,胞に配置されているn−1次元置換多面体は頂点の配置されているn−1次元置換多面体をベルト状に結ぶ際にできるものと考えないと辻褄が合わなくなる.

 なぜなら,n次元置換多面体の頂点数は(n+1)!であって,n−1次元置換多面体の頂点数n!の(n+1)倍であるからである.そうすると,n次元置換多面体の辺数(n+1)!・n/2は

[1]n−1次元置換多面体の辺数n!・(n−1)/2の(n+1)個分=(n+1)!(n−1)/2

[2]n−1次元置換多面体の頂点数n!の(n+1)個分=(n+1)!をすべて結ぶ際にできる辺数=(n+1)!/2

の和として得られることになる.

  (n+1)!(n−1)/2+(n+1)!/2=(n+1)!・n/2

 また,n次元置換多面体の胞数は

[1]n次元単体の頂点数=n+1

[2]n次元単体の辺数〜(n−1)次元胞数の和Σ(n+1,k+1)

の和であって,2(2^n−1)となるのである.

===================================

【2】正軸体版の逐次構造との比較

 3次元正軸体版である大菱形立方八面体は6枚の八角形と12枚の正方形と8枚の六角形からなる.これらは正八面体の6頂点に正八角形,8面に正六角形,6辺に正方形が配置されている.

 一般に,n次元正軸体版には2n個のn−1次元正軸体版が配置されていることになる.その場合,n次元正軸体版の頂点数は2^nn!であって,n−1次元正軸体版の頂点数2^n-1(n−1)!の2n倍である.

 そうすると,n次元正軸体版の辺数2^nn!・n/2は

[1]n−1次元正軸体版の辺数2^n-1(n−1)!・(n−1)/2の2n個分=2^nn!(n−1)/2

[2]n−1次元正軸体版の頂点数2^n-1(n−1)!n!の2n個分=2^nn!をすべて結ぶ際にできる辺数=2^nn!/2

の和として得られることになる.

  2^nn!(n−1)/2+2^nn!/2=2^nn!・n/2

 また,n次元正軸体版の胞数は

[1]n次元正軸体の頂点数=2n

[2]n次元正軸体の辺数〜(n−1)次元胞数の和Σ(n,k+1)2^(k+1)

の和であって,3^n−1となるのである.

===================================

【3】空間充填2^n+2n面体の場合

 置換多面体とその正軸体版の逐次構造は畳み込み(convolution)がしっかりなされているから,

  置換多面体の場合・・・Nk^(n)=n+1Ck+1

  正軸体版の場合・・・・Nk^(n)=2^(k+1)nCk+1

として,

  fk^(n)=Σ(j=0~k)Nj^(n)f(k-j)^(n-1ーj)

ときれいな形にまとまった.

 しかし,空間充填2^n+2n面体ではそれに較べやや緩い結合である.一般に,空間充填2^n+2n面体には2n個のn−1次元正軸体が配置されていることになる.その頂点数は2n・2・n-1C1=2n・2(n−1)=4n(n−1)であって,辺数は

[1]n−1次元正軸体の辺数2^2・n-1C2の2n個分=4n(n−1)(n−2)

[2]n−1次元正軸体の頂点数2・n-1C1の2n個分=4n(n−1)をすべて結ぶ際にできる辺数=2n(n−1)

の和として得られる(?).

  4n(n−1)(n−2)+2n(n−1)=4n(n−1)(2n−3)

 また,n次元正軸体のn−1次元胞数は

[1]n次元正軸体の頂点数=2n

[2]n次元正軸体の(n−1)次元胞数=2^n

の和であって,2^n+2n.n次元正軸体のn−2次元胞数は

[1]n−1次元正軸体のn−2次元胞数=2^n-1の2n個分

[2]n−1次元切頂正単体の(n−2)次元胞数=2nの2^n個分

の和であって,2^nn+2^n+1n=3・2^nnとなる(?).

===================================

【4】上限予想

 2次元:(f0,f1)=(8,8)

 3次元:(f0,f1,f2)=(24,72,14)

 4次元:(f0,f1,f2,f3)=(48,240,192,24)

 5次元:(f0,f1,f3,f4)=(80,560,480,42)

 6次元:(f0,f1,f4,f5)=(120,1080,1152,76)

===================================