半径1の円に内接する正n角形の一頂点から他のn−1個の頂点への距離の積がnに等しいことは,複素数平面で表現すれば以下のように証明できます. (一松信).
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【1】その証明
平面上の半径1の円に内接する正n角形をP0P1・・・Pn-1とする.これを複素数平面上に考え,円を単位円,P0を1の位置におき,
exp(2πi/n)=α
とおくと,P1,P2,・・・,Pn-1はα,α^2,・・・,α^n-1で表される.すなわち,所要の積は
|1−α||1−α^2|・・・|1−α^n-1|=Π|1−α^k|
である.
これは
f(z)=(z−α)(z−α^2)・・・(z−α^n-1)
というn−1次方程式のz=1での値の絶対値である.ただし,z=1において,(1−α^k)と(1−α^n-k)とは共役複素数であり,その積は正の実数だから,積そのものが正の実数で絶対値は不要である.
さて,f(z)は1のn乗根α,α^2,・・・,α^n-1を零点とする多項式である.これに(z−1)を掛ければ1のn乗根全体となり,z^n−1と一致するから,
f(z)=(z^n−1)/(z−1)=z^n-1+・・・+z+1
したがって,f(1)=nである.つまり,所要の積はn(=頂点数)に等しい.
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【2】雑感
[1]2乗の和はベクトルの関係なので3次元以上でも同様に考えられますが,積の方は代数的な式になるため,3次元以上では類似の式は無理がありそうです.
[2]たとえば,4次元の正24胞体はその24個の頂点が四元整数の単元として表現できますが,距離の積は
1^8×(√2)^6×(√3)^8×2=2^4×3^4=1296
であって,頂点(および胞)の数24と直接関係ありません.四元数は非可換体で,その上の多項式を考えても積の順序が影響してきて,複素数平面とは同様にはなりません.
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