先日,一松信先生より「数研通信」を謹呈していただいたのですが,その中に掲載されていた
久末正樹「3辺の長さが等差数列をなす三角形とその面積」旭川藤女子高校
[Q]3辺の長さが整数でかつ等差数列をなす三角形で,その面積が整数になるようなものは?
という問題を紹介したいと思います.
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[1]ヘロンの公式
3辺の長さをa−d,a,a+dとおく(a>d).a,a+d,a+2dとするより対称性がよくなるだろう.すると,半周長sはs=3a/2に簡略化され,ヘロンの公式より,その面積Sは
S^2=3a^2(a^2−4d^2)/16
また,a^2に関する2次方程式を解くと
a^2=2d^2+(4d^2+16S^2/3)^1/2
とくに,d=0のときは正三角形で,
a^2=4S/√3,a=2√S/(4√3)
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[2]ペル方程式
面積が整数であるという条件から,a=2mとおいて式を整理すると
S=m(3(m^2−d^2))^1/2
となる.根号の中が平数である必要があるので,
m^2−d^2=3t^2
m^2−3t^2=d^2
これはペル方程式であり,この解を合理的に出すには√3の連分数展開
√3=[1;1,2,1,2,1,2,・・・]
を用います.1〜2は循環節(周期2)です.
あるいは,Q(√3)の基本単数を求めると,
x^2−3y^2=±1,複号は+1で(2,1)が最小→ε=2+√3
すなわち,Q(√3)ではε=2+√3が基本単数ですが,その他の解は
(2+√3)^n=an+bn√3
とおいて
n=1:2^2−3・1^2=+1→(2,1)
n=2:7^2−3・4^2=+1→(7,4)
n=3:26^2−3・15^2=+1→(26,15)
n=4:97^2−3・56^2=+1→(97,56)
n=5:362^2−3・209^2=+1→(362,209)
n=6:1351^2−3・780^2=+1→(1351,780)
n=7:5042^2−3・2911^2=+1→(5042,2911)
n=8:18817^2−3・10864^2=+1→(11817,10864)
n=9:70226^2−3・40545^2=+1→(70226,40545)
n=10:262087^2−3・151316^2=+1→(262087,151316)
一般に,an^2−3bn^2=1でan^2−3bn^2=−1となる解は存在しません.
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ペル方程式:x^2−dy^2=1について,フェルマーは少なくとも1つの自明でない整数解((x,y)=(±1,0)以外の解が存在するだろうと予想しましたが,この予想は1768年,ラグランジュにより証明されています.この方程式は無限に多くの解をもち,基本解(最小の整数解)を(x,y)とおくと一般解は
±(x+y√d)^n n=0,±1,±2,・・・
により与えられます.ペル方程式は√dの最良近似値を次々に生成する所以です.
Q(√3)ではε=2+√3が基本単数ですが,前述したようにその他の解は
(2+√3)^n=an+bn√3
により与えられます.
an+1+√2bn+1=(2+√3)(an+√3bn)
=(2an+3bn)+√3(an+2bn)
より
an+1=2an+3bn
bn+1=an+2bn
cn =[an,bn]’ A=[a,b]=[2,3]
[c,d] [1,2]
とおくと,cn+1=Acn,cn+2=Acn+1=A^2cn
ここで,ケーリー・ハミルトン方程式
A^2=(trA)A−(detA)I
より
cn+2 =A^2cn=(trA)Acn−(detA)Icn
=(trA)cn+1−(detA)cn
=(a+d)cn+1−(ad−bc)cn
=4cn+1−cn
ところで,数列(cn=4an-1−an-2)の特性方程式
x^2−4x+1=0
の2根を
γ=2+√3,δ=2−√3
とおくと,数列の一般項は,
cn =1/2√3(γ^n−δ^n)
また,連続する2項の比は
2+√3
に次第に近づくことになります.
an =1/2(γ^n+δ^n)
bn =1/2√3(γ^n−δ^n)
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[3]結論
a=2m
S=m(3(m^2−d^2))^1/2
において,
m =1/2(γ^n+δ^n)d
t=1/2√3(γ^n−δ^n)d
γ=2+√3,δ=2−√3
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