[定理]正n角形が半径1の円に内接している.ひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積は頂点数に等しい.
は2次元でしか成り立たなかった.
しかるに,
[定理]単位円に内接する正多角形の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい.単位球に内接する正多面体の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい.
はすべての次元で通用する.両者の違いは何に基づいているのであろうか?
前者は複素数,後者はベクトルの観点から証明したが,前者に対してもベクトルを用いて証明を与えることにしたい.
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[Q]正n角形が半径1の円に内接している.ひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの積を求めよ.
[A1]v個の頂点(P0,・・・,Pv-1)をもつ正多面体が半径1の円に内接しているとき,Q^2=Π(1,v-1)|P0Pj|^2の値を求めよという問題になる.
内積をつかえば
Q^2=(P1−P0)・(P1−P1)・(P2−P0)・(P2−P0)・・・(Pv-1−P0)・(Pv-1−P0)
ベクトル解析では原点はどこでも好きなところに選ぶことができるから,(P0を原点とするのではなく)円の中心に原点をおくと,
(Pj−P0)・(Pj−P0)=P0・P0−2P0・Pj+Pj・Pj
Pk・Pk=1
より
(Pj−P0)・(Pj−P0)=2−2P0・Pj=2(1−P0・Pj)
よって
Q^2=2^(v-1)Π(1−P0・Pj)
が得られる.
しかし,これ以上簡単になりそうにないので,三角法(座標幾何学)を用いることにする.
Pk=(cos(2kπ/v),sin(2kπ/v))
P0・Pj=cos(2jπ/v)
1−P0・Pj=2(sin(jπ/v))^2
Q^2=2^(v-1)Π(1−P0・Pj)=4^(v-1)Π(sin(jπ/v))^2
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[A2]正弦・余弦の積公式
和公式ほどよく知られていないが,正弦・余弦の積公式としていろいろな公式が登場してくる.
Πsinkπ/n=sinπ/n・・・sin(n−1)π/n
=n/2^(n-1)
Πsin(θ+kπ/n)
=sin(θ+π/n)・・・sin(θ+(n−1)π/n)
=sinnθ/2^(n-1)sinθ
ここで,θ→θ−π/2nと置き換えれば
Πsin(θ+(2k−1)π/n)=cosnθ/2^(n-1)
θ=0とおけば
Πsin((2k−1)π/n)=1/2^(n-1)
また,θ=π/2とおけば
Πcoskπ/n=sin(nπ/2)/2^(n-1)
などを導き出すことができる.
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[A3]
Πsinkπ/n=sinπ/n・・・sin(n−1)π/n=n/2^(n-1)
より,
Q^2=v^2
が示される.
すなわち,単位円に内接する正多面体(頂点数v)のすべての辺と対角線の長さの平方積はv^2で与えられることになるが,正弦・余弦の積公式自体が複素数を使って証明すべきものであるから,三角法(座標幾何学)あるいは複素数を使ったアプローチは本質的に2次元で通用するものである.
それに対して,ベクトルの内積は何次元でも通用する方法であって,この議論が3次元以上の正多面体についても成立するとは考えにくいのである.
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