■平行体の体積とグラミアン(その5)

 平行体の体積は行列式(グラミアン)で与えられる.ゾノトープの体積は平行体に分解して,平行体の体積がグラミアンで与えられることを用いればよい.

 とはいえ,置換多面体およびその2^n胞体系についての効率的な体積計算法は十中八九ないと思われる.地道に計算を続行するしかない.正軸体の場合は省略して,正単体の場合の計算方法だけを述べると以下のようになる.

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【1】正単体の基本単体の切断

 n次元正単体はn+1次元空間内のn+1個の単位点(1つだけ座標が1で他が0である点)

  V1(1,0,・・・,0,0)

  V2(0,1,・・・,0,0)

  ・・・・・・・・・・・・・・

  Vn+1(0,0,・・・,0,1)

から生成される.これらの頂点間距離は√2である.

 その際,0次元面〜n次元面の中心は

  {V1,V2,・・・,Vr}

から生成されるので,

  P0(1,0,0,・・・,0)

  P1(1/2,1/2,0,・・・,0)

  P2(1/3,1/3,1/3,・・・,0)

  Pn-1(1/n,1/n,1/n,・・・,0) 

  Pn(1/(n+1),1/(n+1),・・・,1/(n+1))

 原始的平行多面体の元素を求めるには,n次元正単体の基本単体を辺に垂直なn次元超平面で切断すればよいことがわかるだろう.そして,最終的に頂点となるのはS=n(n+1)/2として

  Q=(n/S,(n−1)/S,(n−2)/S,・・・,0)

である.

PnP0=(1−1/(n+1),−1/(n+1),・・・,−1/(n+1))

PnP1=(1/2−1/(n+1),1/2−1/(n+1),−1/(n+1),・・・,−1/(n+1))

PnPn-2=(1/(n−1)−1/(n+1),・・・,−1/(n+1),−1/(n+1))

 PnP0に垂直なn次元超平面が点Qを通るから,この超平面をa・x=cで表すと

  c=n/2S

PnP1に垂直なn次元超平面では

  c=(n−1)/2S

PnPn-2に垂直なn次元超平面では

  c=2/2S

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 PnP0に垂直なn次元超平面が点Qを通るから,この超平面をa・x=cで表すと

  c=n/2S

であることは前述したとおりであるが,この超平面は点P1は通らない.また,この超平面と辺Pn-1P0との交点は

Pn-1P0=(1−1/n,−1/n,・・・,−1/n,0)

より,

xn+1=0

(x1−1)/(1/n−1)=x2/(1/n)=・・=xn/(1/n)=k

(1−1/(n+1))x1−1/(n+1)(x2+・・+xn+1)=n/2S

に代入すると求めることができる.

 具体的には計算しないが,この操作によって,基本単体の各辺とはPn-1Pnを除くn箇所で交わることになる.これらと中心を結ぶベクトルを{v1,・・・,vn},点Qと中心を結ぶベクトルをv0とする.

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【2】体積とグラミアン

 2つのベクトルa↑,b↑を基底とする平行体(平行四辺形)の面積は,

  S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2

    =|a↑・a↑  a↑・b↑|

     |b↑・a↑  b↑・b↑|

 同様に,平行六面体の体積は

  V^2=|a↑・a↑  a↑・b↑  a↑・c↑|

     |b↑・a↑  b↑・b↑  b↑・c↑|

     |c↑・a↑  c↑・b↑  c↑・c↑|

で与えられます.

 これらのように,内積の行列式で定義される行列式をグラムの行列式(グラミアン)といいます.平行体の面積・体積はグラミアンの平方根に等しくなるというわけです.

 また,座標を使って表せば,n+1個の点の座標に(1,1,1,・・・,1)を加えて作られる(n+1)次の行列式の絶対値になります.

  |S|=|1 x1 y1|   |V|=|1 x1 y1 z1|

      |1 x2 y2|       |1 x2 y2 z2|

      |1 x3 y3|       |1 x3 y3 z3|

                     |1 x4 y4 z4|

 原点が含まれるときは,

  |S|=|x1 y1|   |V|=|x1 y1 z1|

      |x2 y2|       |x2 y2 z2|

                   |x3 y3 z3|

のように展開されます.

 これらはそれぞれn次元単体の体積のn!倍になりますから,三角形面積,四面体の体積は,

  S’=S/2

  V’=V/6

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 v0を中心とするベクトル配置V={v0,v1,・・・,vn}に対して,その体積は(n+1,n)個の項をもつ

  vol(V)=1/n!・Σ|det(v0,・・・,vr)|

で与えられる.

 置換多面体ではこの(n+1)!倍

  (n+1)・Σ|det(v0,・・・,vr)|

2^n胞体系では2^nn!倍

  2^n・Σ|det(v0,・・・,vr)|

が求める体積となる.

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