【1】立方体の離散体積とその母関数
単位立方体を□で表す.それをt倍伸長させた立体がt□である.t□の離散体積は
L(t)=#(t□∩Z^n)=(t+1)^n
と書くことができる.
また,L(t)の母関数は,オイラー数を用いて
1+ΣL(t)z^t=1+Σ(t+1)^nz^t=ΣA(n,k)z^k-1/(1−z)^n+1
と書くこともできる.
A(n,k)は{1,2,3,・・・,n}の置換で,その上昇集合がk−1個の要素をもつものの数である.
ΣA(n,k)=n!
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【2】離散体積から連続体積へ
母関数
(hnz^n+hn-1z^n-1+・・・+h1z+1)/(1−z)^n+1
に対して,連続体積
volP=(hn+hn-1+・・・+h1+1)/n!
が成り立つ.ΣA(n,k)=n!より1となる.
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【3】未解決問題
[Q]n次元単位立方体の2^n個の頂点からn+1個を選んだ単体の体積を最大にするにはどのように頂点を選べばよいか? また,最大体積は?
[Q]n次元単位立方体を単体分割する場合の最小数は? (この数はn≦7に対して知られている)
[Q]n(>5)次魔方陣の数を決定せよ.
1から9までの数字を3×3マスにあてはめる3次魔方陣は回転や鏡映をのぞいてただ1種類である.1から16までの数字を4×4マスにあてはめる4次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて880種類ある(除かなければ7040種類).1から25までの数字を5×5マスにあてはめる5次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて275305224種類(約2.75×10^8個)あることがわかっている.いまのところ,n≦5の場合しか知られていない.急速に複雑さが増していくのである.ちなみに,合同変換に対して移り合うものを同じものとみなすと6次の魔方陣は約1.77×10^19個あることが知られている.それにしてもこんなに多くの組合せ方があるとは驚きである.
n×n正方行列で各行各列の和が同じになるものを半魔方陣Hn,主対角線の和も同じになるものを魔方陣Mnと呼ぶと,それぞれの魔方陣の数も母関数の定数項と関連している.魔方陣の数を数え上げる問題の研究は20世紀になってからようやく始まったものである.→コラム「定数項予想入門」参照
[参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン
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