【1】素数もいろいろ(その2)
[1]ヴィーフェリッヒ素数
フェルマーの小定理より(2^(p-1)−1)/pは整数となるが,非常に稀にこの整数がpの倍数になることがある.そのとき,pをヴィーフェリッヒ素数という.ヴィーフェリッヒ素数はp=1093,3511が知られている.
なお,(3^(p-1)−1)/pが整数となるpとしてp=11,1006003が知られている.
[補]ヴィーフェリッヒの定理
フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,pはヴィーフェリッヒ素数であることが必要である.
(2^(p-1)−1)/p=0 (mod p)・・・Wieferich判定基準
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[2]正則素数
正則素数pはBp-3までのベルヌーイ数Bkの分子を割り切ることのできない素数として定義されていて,クンマーの定理によって正則素数であるすべてのnに対してフェルマー予想が成立すること,たとえば,100以下の非正則素数は37,59,67ですべてですから,この3つの数以外では100までのnに対してフェルマー予想が正しいことが証明されたことになります.非正則素数は無限に多く存在し,691も非正則素数のひとつです.そして,クンマーの定理を精密化したもの(詳しく正確にいったもの)は岩澤理論と呼ばれています.
また,x以下の非正則素数の数をI(x)と記すと
I(x)/π(x)〜1-exp(-1/2)=0.39346・・・
正則素数の密度はexp(-1/2).正則素数が無限個あることはいまだ証明されていない.一方,イェンゼンは非正則素数が無限個あることを証明した.
マッキントッシュはベルヌーイ数Bp-3の分子を割り切る素数はウォルステンホルム素数であることを示した.ウォルステンホルム素数でいまのところ既知のものは16843と2124679だけで,p=16843,2124679はBp-3の分子を割り切るのである.
[補]クンマーの定理
フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,
Bk=0 (mod p)・・・Cauchy-Genocci判定基準
0<k<1/2(p−3),B1=0,・・・,Bp-3=0
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【2】合同数
合同数は連立不定方程式
x^2+Ay^2=z^2
x^2−Ay^2=w^2
が同時解をもつ,あるいは
x^4−A^2y^4=u^2
が解をもつような整数として定義される.
2つの方程式をかけると
(zwx/y^3)^2=(x^2/y^2)^3−A^2(x^2/y^2)
を得る.
合同数問題における整数Aの性質と楕円曲線:
y^2=x^3−A^2x=x(x+A)(x−A)
Aは合同数←→y^2=x^3−A^2xは無限個の有理点をもつ
との関連については
J.S.Chahal「数論入門講義」共立出版
などを参照していただきたいのであるが,わかっていることをまとめると,
[1]Aが分離的数の場合,
A=1,A=2→自明解のみ
A=3(mod8)→自明解のみ
A=5,6,7(mod8)→非自明解がある
A=1,2(mod8)→どちらの場合もある
Aが分離的とはp^2|Aなる素数pがないこと,すなわち,A=±p1p2・・・pn,pi≠pjと因数分解されることである(A=±1は分離的,A=1は平方数であり分離的数である唯一の整数).
k=5,6,7(mod8)→非自明解がある
という予想は,BSD予想からも自然にでてくるものであるという.
[2]非自明解がある場合,
Ac^2=ab(a^2−b^2) (a,b)=1,a≠b(mod2)
を満足するa,b,cに対して,
x=(a^2+b^2,2c,a^2−b^2+2ab,a^2−b^2−2ab)
は非自明解を与える.
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【3】合同数の判定アルゴリズム
A=1,2,3,4は合同数ではなく,A=5,6,7は合同数であるが,与えられた正の整数Aが合同数であるかどうかを判定する手順については,タネルの定理(1983)
「Aを平方因子をもたない正の奇数とすると,Aが合同数ならば
2x^2+y^2+8z^2=Aを満たす(x,y,z)の組数は,2x^2+y^2+32z^2=Aを満たす(x,y,z)の組数の2倍に等しい.(BSD予想が正しいならば逆も成立する.)」
たとえば,A=101(合同数)の場合,A=5(mod8)であるが,
2x^2+y^2+8z^2=A→0組
2x^2+y^2+32z^2=A→0組
非自明解そのものを与えることはできないものの,合同数か否かの判定は可能である.
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【4】おまけ
3!−2!+1!=5(素数)
4!−3!+2!−1!=19(素数)
5!−4!+3!−2!+1!=101(素数)
6!−5!+4!−3!+2!−1!=619(素数)
7!−6!+5!−4!+3!−2!+1!=4421(素数)
8!−7!+6!−5!+4!−3!+2!−1!=35899(素数)
このような素数は有限個であることがジュヴコヴィッチにより証明されている.
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