正軸体と切頂正軸体の体積比較によって
1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k≦2(1/2)^k
正軸体の内接球と切頂正軸体の体積比較によって
1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k〜2(π/8)^k
が得られた.
さらに,πe=8,539・・・より,
1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k〜2exp(−k)
が示される.
これらは図形的証明が奏効した例であるが,今回のコラムではそのような例をもうひとつ紹介したい.
===================================
【1】誤差関数の近似式
中心確率
ΦC(x)=1/√2π∫(-x,x)exp(-t^2/2)dt
で定義した場合,Williamsの近似式(1946)
ΦC(x)≒{1-exp(-2x^2/π)}^(1/2)
が,簡単なわりには誤差関数のかなりよい近似になるので,知っておくと便利です.
近似式は純粋な数理統計学者にとってはとても気持ちの悪いことで,とくに小さな自由度に関して信頼できませんから,近似式は受け入れられないと思う人も多いかもしれません.
確かに近似式には泥臭いものが多いのですが,
F(x)={1-exp(-2x^2/π)}^(1/2)
のような美しい近似式にはめったにお目にかかれません.小生の偏見かも知れませんが,まずないと言ってもよいでしょう.この近似式は近似式の中でもとりわけ美しく感じられるものです.このような美しい近似式ならば,受け入れてもよいという人は少なからずいるはずです.
===================================
【2】正方形の円近似
このようにエレガントな式が経験的に得られたものであるはずはないのですが,実は正方形(立方体)の円(球体)近似に基づいています.
ガウス積分
Φ(x)=1/√(2π)∫(-x,x)exp(-t^2/2)dt
を2次元に拡張し,2重積分
(2π)^(-1)∫(-x,x)∫(-x,x)exp{-(t1^2+t2^2)/2}dt1dt2
を考えると,これより直ちに
{Φ(x)}^2
を得ることができる.この式の積分領域は1辺の長さが2xの正方形であり,その面積は(2x)^2である.
ここで,1辺の長さが2xの正方形の積分領域を円で近似することを考える.
πr^2=(2x)^2
すなわち,
r=2x/√π
にrを定めれば,当該の正方形と面積の等しい円が得られることになる.
このとき,
{Φ(x)}^2=(2π)^(-1)∫(-x,x)∫(-x,x)exp{-(t1^2+t2^2)/2}dt1dt2
<∫(0,r)rexp(-r^2/2)dr∫(0,2π)1/2πdθ
=∫(0,r)rexp(-r^2/2)dr=1-exp(-2x^2/π)
より,不等式
Φ(x)<{1-exp(-2x^2/π)}^(1/2)
が得られるのであるが,実際に計算してみると相対誤差は1%を越えず,
F(x)={1-exp(-2x^2/π)}^(1/2)
={1-exp(-.63662x^2)}^(1/2)
はΦ(x)のよい近似式になっているというわけである.
[補]2つの独立な標準正規変数x1,x2の同時分布,すなわち,2変数正規分布の議論から,正方形領域を半径2x/√πの円で近似することを考えてきたが,正方形に内接する円(半径x),外接する円(半径√2x)を考えることによって,Φ(x)の上界・下界が,不等式
(1-exp(-x^2/2))^(1/2)≦Φ(x)≦(1-exp(-x^2))^(1/2)
によって与えられることが示される.
===================================