(その1)では,図形的証明のよって
1/n・2/n・・・(n−1)/n・n/n≦1/2^n-1
を得ることができた.
左辺に対して,相加平均・相乗平均不等式を適用したが,そこには明らかにロスがある.そのロスを解消できれば,2→eとすることができて,(πの部分を無視すると)漸近的にスターリングの公式を説明できたことにもなるのである.今回のコラムでは図形的証明と初等的証明を比較してみたい.
[補]スターリングの公式にはπが出現しますが,この公式は2項分布の正規分布への収束を示すド・モアブル=ラプラスの定理の証明などに用いられます.この定理は中心極限定理の特別な場合に相当しています.
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【1】スターリングの公式の初等的証明
スターリングの公式を誘導してみましょう.
logn!=log1+log2+・・・+logx=Σlogx
ここで,y=logxのグラフを幅が1の長方形に分割していくと,xが十分大きければ相対的に和の間隔が小さくなるので,和は積分に置き換えられます.
Σlogx≒∫(1,x)logtdt
logxの原始関数は置換積分よりxlogx−x+Cと計算されますから,右辺はxlogx−x+1となります.したがって,
n!≒en^nexp(−n)
が得られます.
この段階ですでに図形的証明の精度を上回っていますが,もっと正確に近似すると
∫(0,n)logtdt<logn!<∫(1,n+1)logtdt
より
nlogn−n<logn!<(n+1)log(n+1)−n
したがって,両辺の相加平均に近い(n+1/2)logn−nでlogn!を近似できることになり,
∫(1,x)logtdt
=log1+log2+・・・+logx−1/2logx+δ
であること,また,ウォリスの公式:
√π〜(n!)^22^2n/(2n)!√n
より,結局,
n!〜√(2πn)n^nexp(−n)
にたどりつきます.
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【2】ウォリスの公式
(証) 1/2B(1/2,(n+1)/2)=∫(0,π/2)(sinθ)^ndθ
この値をSnとおくと,部分積分により漸化式
Sn=(n-1)/nSn-2
が得られるから,
n=2k(偶数)なら1・3・・・(2k-1)/2・4・・・(2k)*π/2
n=2k+1(奇数)なら2・4・・・(2k)/1・3・・・(2k+1)
これより
lim1・3・・・(2k-1)/2・4・・・(2k)*√(k)=1/√(π)
変形するとウォリスの公式
(2n)!/(2^nn!)^2√(n)=1/√(π)
が得られる.
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