【1】2元1次形式による整数の表現とシルヴェスターの定理
互いに素な2つの整数a1,a2が与えられたとき,非負整数が存在して
m1a1+m2a2=n
が成り立つことは,硬貨の言葉に置き換えるとa1円玉とa2円玉を用いてn円が支払えることを意味する.どの額が支払えるか,支払えない最高額はいくらかという問題が考えられるところである(この問題はフロベニウスの硬貨交換問題と呼ばれる).
支払えない最高額をフロベニウス数と呼び,g(a1,a2)で表される.
g(a1,a2)=a1a2−a1−a2=(a1−1)(a2−1)−1
で与えられ,1と(a1−1)(a2−1)の間にある整数のちょうど半数が表現可能である.たとえば,a1=4,a2=7の場合,g(a1,a2)=17で,表現不可能な整数の数は(a1−1)(a2−1)/2=9となる.
シルヴェスターの定理の証明は母関数
f(z)=1/(1−z^a1)(1−z^a2)z^n
の定数項と関連しているが,硬貨が3枚以上になると格段複雑になり,n元1次形式に対する公式はほとんど成功しなかった.n=3の場合は,セルマー・ベイヤーによって明示的な形で解決されたが,n≧4の場合には一般的な公式は知られていない.
なお,1から9までの数字を3×3マスにあてはめる3次魔方陣は回転や鏡映をのぞいてただ1種類である.1から16までの数字を4×4マスにあてはめる4次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて880種類ある.1から25までの数字を5×5マスにあてはめる5次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて275305224種類あることがわかっている.急速に複雑さが増していくのである.
n×n正方行列で各行各列の和が同じになるものを半魔方陣Hn,主対角線の和も同じになるものを魔方陣Mnと呼ぶと,それぞれの魔方陣の数も母関数の定数項と関連している.魔方陣の数を数え上げる問題の研究は20世紀になってからようやく始まったものである.→コラム「定数項予想入門」参照
[参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン
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【2】メルカトールの53音階平均律
2:1のオクターブの代わりに,周波数比3:1を(12ではなく)13等分割する新しい音階も提唱されています.
この音階では5と7の13乗が3の整数乗に非常に近いところから由来していて,整数比5:3,7:5,9:7から3^(k/13)をすばらしく近似した音階を構成することができます.
5^13 〜 3^19, 7^13 〜 3^23
また,ピタゴラスの完全5度は3/2倍の周波数になっているのですが,2のベキおよび3のベキが僅差になる例として,Ebに対するD#の比
3^12/2^19〜1+1/73
があげられます.
log23の連分数展開
19/12,65/41,84/53,・・・
であることから,オクターブが都合よく12音階平均律,41音階平均律,53音階平均律に分割されることが示されます.53音階平均律系はメルカトールによるものです.
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