【1】オイラー・ポアンカレの定理
2次元では,
v−e=0,v≧3,e≧3
を満たす凸v角形(凸e角形)が存在する.
3次元凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,
v−e+f=2 (オイラーの多面体定理)
が成り立つ.これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈され,数学の10大定理の1つに挙げられるものである.
それに対して,4次元では
v−e+f−c=0 (シュレーフリ,1852年)
である.
なお,
v−e+f−c+g−h+i−・・・=1−(−1)^n
と一般化したものがオイラー・ポアンカレの定理である.右辺はnが奇数のとき2,偶数のとき0になる.
fiをn次元多面体のi次元面の数とすると,
f0=v,f1=e,f2=f,・・・
ここで,
fn=1(多面体内部のn次元空間),f-1=1(空集合)
と定めると,オイラー・ポアンカレの定理は,
−f-1+f0−f1+f2−・・・+(−1)^(n-1)fn-1+(−1)^nfn=0
で表されることになる.
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【2】正多胞体におけるオイラー・ポアンカレの定理
fkをn次元多面体のk次元面の数とし,
(f0,f1,・・・,fn-2,fn-1)
を構成要素とするn次元正多胞体では,組み合わせ的方法によって,k次元胞数fkが求められます.
たとえば,正単体では
fk=(n+1,k+1)
なのですが,k=n−1のときfk=n+1であって,胞数はn+1と計算されます.
同様に,正軸体では
fk=2^k+1(n,k+1),k=n−1のとき,fk=2^n
立方体では
fk=2^n-k(n,k),k=n−1のとき,fk=2n
となります.
もちろん,
正単体:fk=(n+1,k+1)
正軸体:fk=2^k+1(n,k+1)
立方体:fk=2^n-k(n,k)
はオイラー・ポアンカレの定理:
f0−f1+f2−・・・+(−1)^(n-1)fn-1=1−(−1)^n
すなわち,nが奇数なら2,偶数なら0を満たします.この定理は正多胞体に限らず,n次元凸多胞体について常に成立します.
[1]正単体
n=3:4−6+4=2
n=4:5−10+10−5=0
n=5:6−15+20−15+6=2
n=6:7−21+35−35+21−7=0
[2]正軸体・立方体
n=3:6−12+8=2
n=4:8−24+32−16=0
n=5:10−40+80−80+32=2
n=6:12−60+160−240+192−64=0
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【3】正多胞体におけるオイラー・ポアンカレの定理の双対?
オイラー・ポアンカレの定理は交代和
Σ(−1)^k(n+1,k+1)
Σ(−1)^k(n,k)2^(n-k)
Σ(−1)^k(n,k+1)2^(k+1)
であったが,ここでは正項の和
Σ(n+1,k+1)
Σ(n,k)2^(n-k)
Σ(n,k+1)2^(k+1)
を考える.
Σ(n+1,k+1)=2(2^n−1) k=:0~n-1
n=3:4+6+4=14=2(2^3−1)
n=4:5+10+10+5=30=2(2^4−1)
n=5:6+15+20+15+6=62=2(2^5−1)
n=6:7+21+35+35+21+7=126=2(2^5−1)
は二項定理より簡単に導き出せるからよいにしても
Σ(n,k)2^(n-k)=Σ(n,k+1)2^(k+1)
を閉じた形に表すことはできないのだろうか?
与式はk=0から始まるので第0項から始まるように,パラメータをずらす必要はない.級数Σ(n,k)2^(n-k)の項比は
ak+1/ak=2*(n-k)/(k+1)=-1/2*(k-n)/(k+1)
であるから,
a0*1F0(-n;-1/2)
また,a0=2^nより
2^n*1F0(-n;-1/2)
これより,超幾何級数であると同定される.ここで,参考文献にある公式を活用しよう.この超幾何級数は二項級数に帰着され
1F0(a;x)=(1-x)^(-a)
2^n*1F0(-n;-1/2)=2^n*(3/2)^n=3^n
k=nの場合を差し引いて
Σ(n,k)2^(n-k)=3^n−1
正軸体は立方体の双対であるから,正軸体・立方体ともに
n=3:6+12+8=26=3^3−1
n=4:8+24+32+16=80=3^4−1
n=5:10+40+80+80+32=242=3^5−1
n=6:12+60+160+240+192+64=728=3^6−1
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[補]なお,級数Σ(n,k+1)2^(k+1)の項比は
ak+1/ak=2*(n-k-1)/(k+2)
となって,パラメータをずらす必要を生ずる.
ak/ak-1=2*(n-k)/(k+1)=-2*(k-n)/(k+1)
であるから,
a-1*1F0(-n;-2)
また,a-1=1と約束すると
1F0(-n;-2)=3^n
Σ(n,k+1)2^(k+1)=3^n−1
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