(その13)で試みた正軸体系(n次元双対立方体)の切断を再考してみたい.正軸体は正八面体の一般化である.超立方体の基本単体ほどは扱いやすくはなかろうが,その基本単体も案外おもしろいかもしれない.
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【1】正軸体の基本単体
n次元正軸体の頂点の座標は
(1,0,・・・,0)
(0,1,・・・,0)
・・・・・・・・・・・
(0,0,・・・,1)
で与えられるから,基本単体の座標はk次元面の重心をとることによって,
p0(1,0,・・・,0)
p1(1/2,1/2,0,・・・,0)
p2(1/3,1/3,1/3,0,・・・,0)
・・・・・・・・・・・・・・・・
pn-1(1/n,1/n,1/n,・・・,1/n)
pn(0,0,・・・,0)
すなわち,n+1次元空間で構成したn次元正単体の座標とは,pnだけが異なっている.
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【2】正軸体の基本単体の切断
正軸体の頂点をトランケートして,辺の長さが等しくなるように調整するには頂点ベクトルp0pnに垂直なn次元超平面をx1=t(0<t<1)とおくと
P(t,0,0,・・・,0)・・・p0pnとの交点
Q(t,1−t,0,・・・,0)・・・p0p1との交点
R(1/2,1/2,0,・・・,0)・・・p1
PQ^2=2QR^2 → (1−t)^2=4(t−1/2)^2
より,x1=t=2/3で切断することになる.
p0pnとの交点P,p0p1との交点Qに引き続き,p0p2との交点は
(t,(1−t)/2,(1−t)/2,・・・,0,0)
以下同様にして,p0pn-1との交点は,
(t,(1−t)/(n−1),(1−t)/(n−1),・・・,(1−t)/(n−1))
と続く.
x1>tとなるのは点p0だけであるから,超平面x1=tはpipj(i≠0)とは交差せず,頂点数は2nとなる.したがって,位相的には単体を切頂して得られる超三角柱状の多面体であることがわかる.
正軸体の基本単体の切断の一般化により求めた元素は超立方体の基本単体の切断から求めた元素よりも簡単に扱えることがわけである.
胞数 :c(n)=n+2
頂点数:v(n)=2n
3次元空間内では超立方体の基本単体を2等分したものと一致する.しかし,超立方体の基本単体を2等分するときはnが偶数次元か奇数次元かによって頂点数を分ける必要があったが,この多面体はその必要性がないことからも超立方体の基本単体を2等分して得られるものとは別物であることがわかるだろう.
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【3】正軸体の基本単体の切断(その2)
正軸体の基本単体の切断は案外簡単であった.正軸体の基本単体を2/3の位置で切る話は面白いのであるが,n次元の場合にどういう意味があるのだろうか?
3次元のときは切頂八面体という重要な準正多面体になる.この図形は3次元の対心立方格子のボロノイ領域であるから,自然に空間充填形になる.4次元に機械的に適用すると切頂16胞体(胞は8弧の正八面体と16個の切頂四面体)ができる.これは4次元の準正多胞体のひとつとして重要であるが,4次元の体心立方格子(F4格子)のボロノイ領域は(向きを変えた)正24胞体そのものである.
このことが正24胞体素片(とくに超立方体の切り口である直角錐)から構成するするのに参考になる.ただし,これは4次元特有であって,5次元以上の体心立方格子のボロノイ領域は対角線の半分(中心から頂点までの距離)が1辺より長いために3次元の場合とは変わった形になり,切頂正軸体とは関連がなくなってしまう.
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【4】まとめ
正八面体{3,4}(1,0,0)側からたぐってみても,切頂八面体の{3,4}(1,1,0)の拡張は正24胞体
{3,3,4}(0,1,0,0)={3,4,3}(1,0,0,0)
すなわち,正24胞体は菱形十二面体の拡張であるとともに,切頂八面体の拡張でもある.さらに,
{3,3,3,4}(0,1,1,0,0)
{3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)
と考えられる.
ただし,それは全体の形であって,正軸体の基本単体を切断した形は立方体の基本単体を切断した形と同じになるかどうかはわからない.だからこそ研究する価値がある.
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