[参]石井源久「多次元半正多胞体のソリッドモデリングに対する研究」
の考察はすばらしいの一言につきる.このような立派な研究が行われていたことをまったく知らなかったことを恥じ入るばかりである.
なお,ここでは立方体の切頂ばかりを取り上げるが,
[参]石井源久「多次元半正多胞体のソリッドモデリングに対する研究」
には正四面体,正八面体,正十二面体,正二十面体,4次元正24胞体,その他に対する結果も掲載されていることを申し添えておきたい.
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【1】3次元立方体の切頂
3次元立方体の切頂では
[1]辺心に達するまで:切頂六面体
[2]辺心 :立方八面体
[3]辺心から面心の間:切頂八面体の形
[4]面心 :正八面体
[0]頂点を通る場合 :{3,4}(0,0,1)
[1]辺の中点を通る場合:{3,4}(0,1,0)
[2]面の中心を通る場合:{3,4}(1,0,0)
であって,また[1]と[2]の中間に
[3]切頂八面体{3,4}(1,1,0)
があることになる.形状ベクトルから縮退(contraction)情報を求めると
[0](0,0,1)→(1,0,0)
[1](0,1,0)→(1,0,1)
[2](1,0,0)→(0,0,1)
[3](1,1,0)→(1,0,1)
また,原正多胞体である正八面体{3,4}のfベクトル
f=(6,12,8)
から胞数を求めることができて,それぞれ
[0]6
[1]6+8=14
[2]8
[3]6+8=14
面体が得られることになる.
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【2】5次元立方体の切頂
[0]頂点を通る場合 :{3,3,3,4}(0,0,0,0,1)
[1]辺の中点を通る場合:{3,3,3,4}(0,0,0,1,0)
[2]面の中心を通る場合:{3,3,3,4}(0,0,1,0,0)
[3]胞の中心を通る場合:{3,3,3,4}(0,1,0,0,0)
[4]4次元胞の中心を通る場合:{3,3,3,4}(1,0,0,0,0)
また,
[5]162胞体{3,3,3,4}(1,1,1,1,0)
は[3]と[4]の中間にあるのではない.
形状ベクトルから縮退(contraction)情報を求めると
[0](0,0,0,0,1)→(1,0,0,0,0)
[1](0,0,0,1,0)→(1,0,0,0,1)
[2](0,0,1,0,0)→(1,0,0,0,1)
[3](0,1,0,0,0)→(1,0,0,0,1)
[4](1,0,0,0,0)→(0,0,0,0,1)
[5](1,1,1,1,0)→(1,1,1,0,1)
また,原正多胞体である正16胞体{3,3,3,4}のfベクトル
f=(10,40,80,80,32)
から胞数を求めることができて,それぞれ
[0]10
[1]−[3]10+32=42
[4]32
[5]10+40+80+32=162
胞体が得られることになる.
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【3】6次元立方体の切頂
[0]頂点を通る場合 :{3,3,3,3,4}(0,0,0,0,0,1)
[1]辺の中点を通る場合:{3,3,3,3,4}(0,0,0,0,1,0)
[2]面の中心を通る場合:{3,3,3,3,4}(0,0,0,1,0,0)
[3]胞の中心を通る場合:{3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)
[4]4次元胞の中心を通る場合:{3,3,3,3,4}(0,1,0,0,0,0)
[5]5次元胞の中心を通る場合:{3,3,3,3,4}(1,0,0,0,0,0)
また,
[6]162胞体{3,3,3,3,4}(1,1,1,1,1,0)
は[4]と[5]の中間にあるのではない.
形状ベクトルから縮退(contraction)情報を求めると
[0](0,0,0,0,0,1)→(1,0,0,0,0,0)
[1](0,0,0,0,1,0)→(1,0,0,0,0,1)
[2](0,0,0,1,0,0)→(1,0,0,0,0,1)
[3](0,0,1,0,0,0)→(1,0,0,0,0,1)
[4](0,1,0,0,0,0)→(1,0,0,0,0,1)
[5](1,0,0,0,0,0)→(0,0,0,0,0,1)
[6](1,1,1,1,1,0)→(1,1,1,1,0,1)
また,原正多胞体である正32房体{3,3,3,3,4}のfベクトル
f=(12,60,160,240,192,64)
から胞数を求めることができて,それぞれ
[0]12
[1]−[4]12+64=76
[5]64
[6]12+60+160+240+64=536
胞体が得られることになる.
6次元立方体の基本単体の半切体は3次元面の中心を通るから,12房体以外に76房体も作ることができる.
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【4】補足
正24胞体に相当する3次元正多面体はありません.なぜかというと,正24胞体は自己双対かつ中心対称であり,3次元空間でそれに対応する正多面体はないからです.実は24胞体は,すべての次元を通じて,単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であって,例外中の例外といってもよいものなのです.
この24胞体の対称性を,鏡映で生成される既約な有限群(ルート系)との関係でみても興味深いものがあります.n次元空間において高度の対称性をもったベクトルの集合がルート系なのですが,n次元正単体とn次元立方体の対称群は,それぞれAn-1,Bn(Cn)で表されます.それに対して,24胞体は1つの例外型対称群F4をもつことが知られています.
なお,正24胞体による空間充填は4次元独特の充填形です.正24胞体の頂点は正8胞体と正16胞体の頂点をなしますから,正24胞体は3次元の菱形12面体に対応するものであって,正24胞体による4次元空間充填形は4次元版の菱形12面体による空間充填形に相当します.すなわち,それは4次元の面心立方格子といってよいものであって,正24胞体に含まれる正16胞体は互いに60°をなしますから,D4の3対性をもっているのですが,4次元の最密正則胞体充填構造D4は正24胞体で埋めつくされているときであることが知られています.
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