話が混み入ってきたので,小括しておきたい.
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【1】立方体・正軸体の切断
3次元平行多面体の場合,立方体の基本単体を2等分することによって切頂八面体の元素ができ,それを使うと他の平行多面体も作ることができた.
ペンタドロンは立方体の基本単体をその最長辺の垂直2等分面で切断した立体である.ペンタドロンをうまく組み合わせると,立方体・菱形十二面体・切頂八面体などの空間充填形(平行多面体)ができるが,平行多面体がこのような1種類の素材だけで組み立てることができるのは驚きである.
n次元の立方体を超平面x1+・・・+xn=n/2で頂点まわりをすべて切頂することによって,n=3では実際に切頂八面体,n=4では正24胞体が得られる.
[補]3次元空間を埋め尽くす正多面体は立方体のみである.5次元以上の空間でもn次元立方体のみが空間充填図形となるのに対して,4次元空間の充填図形は多彩で正8胞体,正16胞体,正24胞体の3種類ある.これら3種類に共通する元素としてRPがある.なお,4次元の正16胞体は空間充填形だが,平行多面体ではない.平行移動したものだけでは済まず,回転させた位置のものが不可欠だからである.
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【2】正単体の切断
n次元平行多面体の面数は最大2(2^n−1)個,最小2n個となる(ミンコフスキーの定理).したがって,n次元の立方体と2(2^n−1)胞体(n次元の切頂八面体)に共通する元素を作ることができれば,それがn次元平行多面体の元素となりうる可能性は大である.
2(2^n−1)胞体(n次元の切頂八面体)を得るためには,正単体を切断する必要がある.正単体の切断体と立方体(あるいは同じことではあるが正軸体)の切断体は3次元の場合は一致するが,4次元以上の場合は一致しない.たとえば,超立方体(正軸体)の角を切り落とした図形は,切り方の深さにもよるが
正単体の切断体 正軸体の切断体
n=3 14面体 14面体
n=4 30面体 48面体
n=5 62面体 162面体
n=6 126面体 536面体
といった具合である.
このことから,後者は平行多面体の元素ではないこともわかる.しかしながら,正単体の切断体を得るのは難しく,(その12)では断念するはめに陥ってしまった.
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【3】平行2(2^n−1)面体の元素
平行2(2^n−1)面体の元素を設計する場合,置換多面体(permutahedron)を考えるのが有効であると思われる.2次元置換多面体は正六角形,3次元置換多面体は切頂八面体である.置換多面体はvn=(n+1)!個の頂点とcn=2(2^n−1)個のn−1次元胞をもつ.また,置換多面体は(n+1,2)次元の立方体のアフィン射影で,単純ゾーン多面体である.
途中経過であるが,3次元を除き,平行2(2^n−1)面体の元素と立方体の基本単体の半切による元素は一致しないものと思われる.たとえば,切頂の深さを変えたところで,4次元立方体の基本単体の切頂体は(24面体にはなっても)30面体にはならないし,同様に5(6)次元立方体の基本単体の切頂体は62(126)面体にはならないことが確かめられているからである.その意味でもペンタドロンは奇跡の多面体なのである.
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