昨年3月,ドルビリン先生(ステクロフ研究所)より,頂点座標が整数(0,±1,±2,±3,・・・,±n−1)の点の置換2^(n-1)・n!個からなるpermutahedronという族の多面体であることを教えていただいたのであるが,どうやら私に勘違いがあったようだ.
(a,a±d),a±2d),・・・,a±(n−1)d))すなわち,整数座標で等差数列をなす一般化したpermutahedronの場合も話されたため,間違ってしまったのだと思う.
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【1】置換多面体(permutahedron)
あらためて定義したい.ベクトル(1,2,3,・・・,n+1)の置換によって得られるすべてのベクトルの凸包として得られる多面体で,(n+1)!個の頂点をもつ.
置換多面体の2頂点が辺で結ばれていることとベクトル(1,2,3,・・・,n+1)の対応する2つの置換が隣り合った要素の互換になっていることが同値なので,2次元置換多面体は正六角形,3次元置換多面体は切頂八面体である.
また,置換多面体は(n+1,2)次元の立方体のアフィン射影で,単純ゾーン多面体であるから,中心対称で面はすべて重心に関して中心対称なzonohedronである.すなわち,n次元置換多面体は平行多面体の定義を満たしている(n次元切頂八面体).
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【2】3次元平行多面体
平行多面体とは,平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体であって,3次元格子から決まる本質的なボロノイ領域は,ロシアの結晶学者フェドロフの見つけた5種類の平行多面体−−立方体(平行6面体を含む),6角柱,菱形12面体,長菱形12面体(6角形4枚と菱形8枚の2種類で作る12面体),切頂8面体−−しかありません.
これら5種類の図形は5種類の正多面体(プラトン立体)ほどよく知られていないのですが,少なくとも同じ程度に重要であると考えられます.
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【3】ゾーン多面体(zonohedron)
6角柱,菱形12面体は4次元立方体,長菱形12面体は5次元立方体,切頂8面体は6次元立方体を3次元空間に投影したものと一致しています.ゾーン多面体とは立方体のアフィン射影で表される多面体です.
切頂八面体からあるゾーンを抜くと,長菱形二十面体→菱形十二面体,六角柱→立方体になるので,これらは一連のゾーン多面体と考えることができます.立方体のすべての稜は3方向,菱形十二面体,六角柱では4方向,長菱形十二面体では5方向,切頂八面体では6方向を向くことになります.
一般にn次元平行多面体ではn方向〜n(n+1)/2方向を向くことになるのですが,それに伴って胞数は2n〜2(2^n−1),頂点数は2^n〜(n+1)!という構成になっています.
2≦k≦n−2に対して,すべてのk面が中心対称なのは,ゾーン多面体の限られるますただし,k=n−1が中心対称であるとしても,その多面体がゾーン多面体であるとは限りません(たとえば,4次元正24胞体).
また,ゾーン多面体は一般に単純多面体ではありません.たとえば,菱形12面体は8個の頂点は単純ですが,残り6個の頂点は単純ではありません.
ゾーン多面体を平行体に分解して,平行体の体積が行列式の形で与えられることを用いれば,ゾーン多面体の体積を計算することができます.→コラム「平行体の体積とグラミアン」参照
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