■ラマヌジャンの和(その5)

 インド生まれの数学者ラマヌジャンは,多くの公式や定理を発見し,神秘的な東洋の天才数学者とよばれていて,1日1つの割合で新しい公式または定理を発見したといわれています.

 たとえば,コラム「シンク関数とゼータ関数(その2)」で紹介した,すべての素数をわたる無限積

  Π(p^2+1)/(p^2−1)=5/3・10/8・26/24・50/48・・・=5/2

が成り立つというのもラマヌジャンの式です.

 今回のコラムではランダウ・ラマヌジャン定数を紹介したいのですが,まずはその前に・・・

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【1】ラマヌジャンが編み出した数学上の技巧

 数式と戯れる喜びを知っていたラマヌジャンは,平方根が入れ子状に無限に続く

  √(1+2√(1+3√(1+4√(1+・・・))))

の値を求めよという問題をインド数学会誌に投稿している.

  [参]カニーゲル「無限の天才」工作舎,p90

 しかし,この問題に対する読者からの解答は寄せられず,結局答えたのは出題者であるラマヌジャン本人であったとのことである.

 ラマヌジャンのクイズの前に,もし,

  √(1+a√(1+a√(1+a√(1+・・・))))

の値はという問題であれば,

  x=√(1+a√(1+a√(1+a√(1+・・・))))

とおくと,

  √(1+ax)=x → x^2−ax−1=0

より,

  x=(a+√(a^2+4))/2

を得ることができる.

 a=1のとき,

  √(1+√(1+√(1+√(1+・・・))))=φ  (黄金比)

 k=√(m+√(m+√(m+√(m+・・・))))

の場合は,2次方程式の解の公式を使えば,m=k^2−kとすることができる.

  √(2+√(2+√(2+√(2+・・・))))=2

  √(30+√(30+√(30+√(30+・・・))))=6

 2次方程式:ax^2+bx+c=0の解の公式は次式で与えられる.

  x=(−b±√(b^2−4ac))/2a

 根号の中の式を平方数の差とみれば2項に因数分解することができ,以下のようにも表現できる.

  x=m2/2m1±{(m2+2√m1m3)(m2−2√m1m3)}^1/2/2m1

 ラマヌジャンは中学時代に根号の中の式を書き換えて

  a(a+2)=a√(a+2)^2=a√(1+(a+1)(a+3))

 =a√(1+(a+1)√(1+(a+2)(a+3))=・・・

を発見した.ここでa=1とすると求める値が3であることがわかる.

 ラマヌジャンはさらにより一般的な恒等式

  x+n+a=√(ax+(n+a)^2+x√(a(n+x)+(n+a)^2+(x+n)√・・・)))

を発見している.

 ラマヌジャンのクイズは,ここでx=2,n=1,a=0とした場合である.

  √(1+2√(1+3√(1+4√(1+・・・))))=3

 また,x=2,n=1,a=1とすると

  √(6+2√(7+3√(8+4√(9+・・・))))=4

になることがわかる.

  √(1−√(1−1/2√(1−1/4√(1−1/8√1−・・・))))=1/2

  3√(−6+3√(−6+3√(−6+3√(−6+・・・))))=−2

もラマヌジャンの式である.

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【2】ランダウ・ラマヌジャン定数

 ガウスは,π(x)をx以下の素数の個数とすると,

  π(x)〜x/logx   (x→∞)

が成り立つだろうと予想しました.この予想はリーマンの研究を経て,1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンによって証明されました.これを素数定理といいます.

 コラム「素数もいろいろ,素数定理もいろいろ」で述べたことですが,

[1]双子素数の分布に関しては,ハーディとリトルウッドによって,

  πtwin(x)〜C∫(2,x)dt/(logt)^2〜Cx/(logx)^2

ただし,pを3以上の素数として

  C=2Π(1−1/(p−1)^2)=1.3203・・・

と予想されています.

[2]10を原始根とする素数,たとえば,

  7,17,19,23,29,47,59,61,97,・・・

の密度について,アルティンは

  π10(x)〜Cx/(logx)

と予想しています.

 ただし,pを素数として,Cは

  C=Π(1−1/p(p−1))=0.37395・・・(アルティンの定数)

[3]n^2+1型素数

  πq(x)〜C∫(2,x)dt/(logt・√t)〜C√x/(logx)

と予想できます.ハーディとリトルウッドはCの値も決定しています.

  C=Π(1−χ(p)/(p−1))

  n^2+1=0 (modp)→ χ(p)=1

  n^2+1≠0 (modp)→ χ(p)=−1

  C=Π(1−(−1)^(p-1)/2/(p−1))=1.3727・・・

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 すべての整数は4つ以下の平方数の和として表現することができます(ラグランジュの定理,1770年).素数とは関係はないのですが,2つの平方数の和として表現できるx以下の整数の個数をn(x)とすると,ランダウとラマヌジャンはそれぞれ独自に

  n(x)〜Cx/(logx)^1/2   (x→∞)

  C={1/2Π(1/1−p^-2)}^1/2=0.764223653・・・

  pは4n+3型素数をわたる

が成り立つことを証明しました.

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