龍谷大学で行われた研究会で,前原潤先生(元琉球大,現東海大)が「正多面体に手錠をはめる」という面白い話をされたそうである.正四面体を1辺の長さの90%の直径をもつ円形の穴を通すことができるなどは,やってみれば理解できるが,意外な事実ではないだろうか.
前原先生の講演では,結果だけで詳しい証明には立ち入らなかったそうである.90%といったのはおおざっぱな値で,正確な境界は89,6%余りで,これはある有理関数の極値をコンピュータを援用して計算した値とのことである.
1/√2≦d≦0.896・・・
先日,前原先生から直接詳細を窺ったので報告したい.
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【1】正多面体に手錠をはめる円形の穴の境界
(その1)−(その3)では,正多面体の通り抜ける円形の穴の下限を「ペトリー面」を使って求めた.ここでは上限を求めることになるが,正弦定理より
a/sinA=2R
[1]立方体の場合
a=(2+x^2)^1/2
sinA={(x^2+2x+3)/2(2+x^2)}^1/2
2R={2(x^2+2)^2/(x^2+2x+3)}^1/2
4R^2=2(x^2+2)^2/(x^2+2x+3)}
(4R^2)’=0より
x^3+3x^2+4x−2=0,x=0.379,d=2R=1.535
また,1辺1の立方体に対して,可能な下限は中央の切り口(ペトリー面)−1辺が1/√2の正六角形(ペトリー多角形)の対角線(長さ√2)を直径とする円である.これより,
√2≦d≦1.53477・・・
[2]正八面体の場合
a=(2+x^2)^1/2
sinA={(x^2+2x+3)/2(2+x^2)}^1/2
2R=2(x^2+1)/(3x^2+2x+3)}^1/2
4R^2=4(x^2+1)^2/(3x^2+2x+3)
(4R^2)’=0より
3x^3+3x^2+3x−1=0,x=0.253,d=2R=1.1066
また,1辺1の正八面体に対して,可能な下限は中央の切り口(ペトリー面)−1辺が1/2の正六角形(ペトリー多角形)の対角線(長さ1)を直径とする円である.これより,
1≦d≦1.1066・・・
なお,正十二面体や正二十面体などの場合は難しい問題になるということであった.
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