平行多面体とは,平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体であって,3次元格子から決まる本質的なボロノイ領域は,ロシアの結晶学者フェドロフの見つけた5種類の平行多面体−−立方体(平行6面体を含む),6角柱,菱形12面体,長菱形12面体(6角形4枚と菱形8枚の2種類で作る12面体),切頂8面体−−しかありません.
6角柱,菱形12面体は4次元立方体,長菱形12面体は5次元立方体,切頂8面体は6次元立方体を3次元空間に投影したものと一致しています.これら5種類の図形は5種類の正多面体(プラトン立体)ほどよく知られていないのですが,少なくとも同じ程度に重要であると考えられます.
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【1】ゾーン多面体の構成
切頂八面体からあるゾーンを抜くと,長菱形二十面体→菱形十二面体,六角柱→立方体になるので,これらは一連のゾーン多面体と考えることができます.立方体のすべての稜は3方向,菱形十二面体,六角柱では4方向,長菱形十二面体では5方向,切頂八面体では6方向を向くことになります.
一般にn次元平行多面体ではn方向〜n(n+1)/2方向を向くことになるのですが,それに伴って胞数は2n〜2(2^n−1),頂点数は2^n〜(n+1)!という構成になっています.
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【2】正定値2次形式
原点を中心とする2次元楕円は,
ax^2 +bxy+cy^2=1
あるいは,行列・ベクトル表現すると
[x,y][a,b/2][x]=1
[b/2,c][y]
と書けます.左辺のような形の式を2次形式といい,すべての実数x,yに対して正となるためには,
a>0,D=b^2−4ac<0
が成り立たなくてはなりません.
よく知られているように,D=b^2−4acは2次方程式ax^2 +bx+c=0の判別式であり,行列式
|a,b/2|=b^2/4−ac
|b/2,c|
と関係しています.
一般に,原点を中心とする2次超曲面
Σhijxixj=1 (hij=hji)
が,n次元楕円であるための条件は,左辺の2次形式がすべての実数x1,・・・,xnに対して正定値(positive definitive)であること,すなわち,n×n行列:H={hij}が正定値の行列であることです.
そのための必要十分条件は,k行・k列までを取り出して得られる小行列式|Hk|を
|h11・・・h1k|
|Hk |=|・・・・・・・|
|hk1・・・hkk|
として
|H1|=h11>0,|H2|=|h11 h12|>0,・・・,
|h21 h22|
|Hn|=|H|>0
となることです.
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