3次元の正多面体元素定理で本質的な役割を果たしたのはRT(trirectangular tetrahedoron)であったが,4次元の場合,RP16個で正16胞体,RP24個で正8胞体,RP192個で正24胞体を組み立てることができるから,RP(right penta)は4次元正多面体の元素のひとつとなる.
また,平行多面体元素定理の本質はもうひとつの直角三角錐であるquadrirectangular tetrahedoronにある.その切半超平面x1+・・・+xn=n/2が直線pipjと交差するための条件を求めてみる.この超平面は切頂面であって,n=3として,8頂点まわりをすべて切頂すると実際に切頂八面体が得られる.
そこで(その28)で予想をたてた.4次元の場合,n=4とするとx1+・・・+xn≦n/2の領域はちょうどRPとなる.4次元立方体の奇頂点を中心として8個のRPを切り落とせば芯に正16胞体が残るが,偶頂点にも同じ操作を加えれば4次元切頂八面体(30胞体)が得られるものと予想される.本当だろうか?
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【1】予想は外れるためにある
n=4とするとx1+・・・+xn≦n/2の領域はちょうどRPとなる.4次元立方体の奇頂点を中心として8個のRPを切り落とせば芯に正16胞体が残るが,偶頂点にも同じ操作を加えればどうなるのだろうか?
3次元の場合,3次元立方体の奇頂点を中心として4個のRTを切り落とせば芯に正四面体が残るが,偶頂点にも同じ操作を加えれば,それは正四面体の辺の中点を通ることから,立方体の双対である正八面体が得られる.n=4の場合のすべての頂点から16個のRPを取り除く操作によって,正16胞体の24本の辺の中点を通ることから,正24胞体が得られるのである.
(±1,±1,±1)を頂点とする立方体を,±x±y±z=3/2で表される8枚の平面で切った残りは,頂点の座標(±1,±1/2,0)の±のすべての組み合わせとすべての置換,合計24個を計算してみると,正確に切頂八面体になることがわかる.(±1,±1,±1,±1)を頂点とする4次元超立方体を,±x±y±z±w=2で表される16枚の超平面で切った残りは,正24胞体になるのである.
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【2】誤解は正すためにある
私自身も誤解していましたが,4次元の正16胞体は平行多面体ではありません.空間充填形ではありますが,そのためには平行移動したものだけでは済まず,回転させた位置のもの−−軸でいえば[1000]軸でなく[1111]軸のもの−−が不可欠です.正8胞体,正24胞体は平行多面体です.
また,RP(立方体の端欠)と超立方体の基本単体とはよく似ていますが,3次元以上では本質的に別の立体です.4次元の場合は特に二胞角が直角の有理数倍ですが,胞(3次元多面体)の二面角は必ずしも有理比ではなく,両者は分解合同ではないようです.したがって,基本単体あるいはその切半体からRPを組み立てることが不可能です.
RP(正多胞体の元素) 基本単体の切半体(平行多胞体の元素)
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正8胞体 24 768
正16胞体 16 −
正24胞体 192 384
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